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第60話
ほぼ昼食の時間だった朝食を済ませると、その片付けとさらに作り置きまで作ってくれた。
さすがに何もしないのは申し訳なくて、手際が悪すぎて多分邪魔だっただろうけど、俺も無理言って手伝わせて貰った。
「もう少し居てもいいですか。」
まだ14時だし、今日は講義も休んだから予定もない。
「もちろん。俺はいつまで居てもらっても大丈夫ですよ。」
「じゃあ俺、天宮さんのおすすめの本読みたいです。」
「おすすめの本ですか?」
「はい。いつもお店で読んでるので、どんなものを読んでるか気になっていたんです。」
「別に普通ですよ?話題になったものとか、タイトルが気になったものとか。
俺はミステリーが好きなので、ミステリー小説が多いですかね。どれも違った面白さがあるので、おすすめと言われると難しい……。
気になるタイトルのものを読んでみるのはどうでしょうか。」
俺はそう言って本棚の前に立つ。
首藤さんの好みは分からないし、1番気になるものを読むのがいい気がする。
「へぇ、恋愛小説も読むんですか?意外。」
「……あ、それは、最近ちょっと……。」
首藤さんを好きになってから、世の中の人たちはどんな恋愛をするのか気になって購入した。
今までは縁のないジャンルだったから、端の方に数冊だけある程度だ。
「この本、2個上の先輩との恋の話じゃないですか。
偶然。俺たちと一緒ですね?」
そう言って意地悪そうな顔で見てくる。
偶然なんて思ってないくせに。絶対わかって言ってる。
そして想像通り、先輩との恋模様が気になったから手に取った本である。
「面白かったですか?」
「はい。けど恐らく首藤さんと出会う前なら心底理解できなかったと思います。
ちなみにその小説の先輩は、首藤さんと少し似てます。」
「え、どの辺がですか?」
「彼女さんに可愛いって頻繁に言うところとか、よくモテるところとか。」
「かっこいいなと思いました?」
「いえ、特に。首藤さんみたいだなと、読んでて笑ってしまいました。」
「本読んでる時も俺のこと考えてくれたんですね。」
「それはまぁ、はい。似てたので。」
「俺、この本読んでいいですか?他のに比べて薄めだし。」
「どうぞ。俺もなにか読んでますね。」
「はい。」
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