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第61話

ふたりで並んで静かに本を読む。 部屋にはページをめくる音だけが響いていた。 「天宮さん。」 とても静かに本を読んでいたと思えば、急にこちらを見て真剣な顔をしてくる。 「どうしました?」 「これ、思ったよりもそういう描写があるので無理です。 さっき俺らと似てるとか思ってしまったために、俺も天宮さんとすることを考えてしまって、もう何も内容入ってきません。」 「あぁ……。」 営みの部分を完全に描写しているわけではないが、中学生くらいには見せられないような描写は確かにあったような気もする。 「じゃあ休憩にしましょうか。」 首藤さんはこれ以上読めないだろうし、首藤さんがそんなこと言うから、俺も想像してしまって集中力が完全に切れた。 「そうしましょう。 俺は少し外気に当たってきます。」 「はい。」 ベランダに出て外を眺める首藤さんの後ろ姿を眺める。 熱は下がったはずなのに、体が熱をもつ理由には気づいている。 もう風邪も治ったし俺的には別にいいんだけど、首藤さん的には卒論提出まで待った方がいいんだろう。 ベランダにいる首藤さんと目が合う。 首藤さんは俺の顔を見るなり中に入ってきた。 そして座ってる俺の前に正座する。 「天宮さん。」 「はい。」 「正直そのエロい顔のせいで今とても天宮さんのことを抱きたいんですが、そんなことすれば毎日でもここに来て毎日でも抱く自信があるので、あの小説の奴と違って大人な俺は我慢します。」 「……っはい。」 突然のストレートすぎる告白に、驚きと恥ずかしさを感じる。 けど求められるのは素直に嬉しい。 というかエロい顔ってなんだろ。俺そんな顔してた……? 「けど、そんなに大人でもないので触りたい欲が我慢できません。」 「はい?」 さっきまで大人だったはずでは……。 「けど天宮さんの嫌がることは少しもしたくないと思ってるので、嫌なことは嫌だと言ってくれればいいし、殴ってもいいです。」 「?はい。」 「昨日してないようなキスもしたいし、身体にも触れたいと思っています。」 「……はい。」 「というわけで、今後を想定して、先に嫌なことはないか確認しておきたいんです。」 「なるほど。」 「さっきの小説を読んでいても思いましたが、もちろんムードも必要ではあるとは思います。けれど流れでしてしまうのは俺は嫌です。 嫌な時は嫌、気分じゃない時は気分じゃないって教えてください。」 思えば、首藤さんは手を繋ぐ時も勝手に繋いでくることは無く、毎回あらかじめ声をかけてくれていた。 「はい。首藤さんもそれは教えてください。」 「はい。 身体に触れられる上で嫌なことはありますか。して欲しくない事とか。」 「触られたことがないのでなんとも。今のところは何も無いです。」 「じゃあ何かあればその都度教えてください。 あと今気づいたのですが、何度か無許可の接触をしてしまっていて申し訳ないです。」 「ふふ、律儀ですね。大丈夫ですよ。嫌だと思ったことは一度もないです。 俺的には、ある程度の接触は無許可で大丈夫です。 頭撫でるとか手を繋ぐとか、あとハグも。」 「じゃあ俺たちの間でその辺りは良しということにしましょう。」 「はい。」 「ということで、キスしてもいいですか。」 「あの。」 「はい。」 「俺も今は、あの……そういう気分なので、俺がストップしない限りはなんでも許可します。あ、もちろんノーマルなものでお願いしたいですが。」 いちいち舌入れていいですか、とか、どこどこ触ってもいいですか、って聞いてきそうだから言ったけど、これは結構恥ずかしい。 けどこちらを大切に思ってくれているのがよくわかって、恥ずかしさ以上に満たされるものがある。 「……可愛いこと言いますね。 わかりました。」

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