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第65話

靴を脱いで部屋に上がると同時くらいに、後ろからそっと抱きしめられる。 「やっと触れられました。 1ヶ月がこんなに長いものだと思いませんでした。」 「本当にお疲れ様です。」 「ありがとうございます。 ……あの、早いかもしれないんですが、卒論が終わったら、ってやつ今からしたいです。」 「……はい。 けど先にお風呂に入りたいです。」 「俺も一緒に入ってもいいですか。」 「はい?」 「調べたんですが、お尻使う場合は浣腸するんですよね。俺がしたいです。」 「は?絶対やだ。 そんなの恥ずかしすぎます。無理です。」 「1から俺がするって言ったじゃないですか。 いろいろ調べたので任せてください。」 「そこはゼロです!させません。」 「どうしてもダメですか?」 「俺の嫌なことはしないんですよね?」 「……そうですが。」 あからさまに落ち込んだ顔をする首藤さん。 「……そんなにしたいですか?」 「はい、とても。」 確かに俺もはじめてでひとりだと不安な気持ちもある。 けどそこは見せるもんなのだろうか……? 普通そんなのしてあげたいって思うかな!? 「すみません。 天宮さんの嫌なことをするつもりは無いので、今のは気にしないでください。 夜ご飯の買い物にでも行ってきます。」 「待ってください。 やっぱり……一緒に入りますか?」 「それは俺にゼロも任せて頂けるという事ですか。」 「……はい。」 あぁ。承諾してしまった。 あんな顔されたら、そんなに嫌なことでもないんじゃないか、って思ってしまった……。 ふたりで脱衣所に立ってるけど、恥ずかしくて脱げない……。 それに俺、首藤さんの体見るの初めてだ。 「先に俺入ってましょうか。 好きなタイミングで来てくれたらいいですよ。」 「はい。」 全く恥じらいなどない顔でささっと服を脱いで先にお風呂場に入っていく姿を見て、俺も服に手をかける。 俺に関しては1回見られたようなもんだし。うん。 にしてもチラッと見ただけだけど、首藤さん結構筋肉すごかったなぁ。 体付きまでカッコいいなんてほんとにずるい。 「……失礼します。」 「どうぞ。」 服を脱いでそっと中を覗くと、首藤さんが髪を洗っているところだった。 招かれたしもう入るしかない。 「お邪魔します……。」 すばやく後ろを通って、軽く掛け湯をしてから先に湯船に浸かる。 向こうは髪流してたし多分見られてないはず。 「どうせ見ることになるのに恥じらってるあたり、可愛いですよね。」 「だって恥ずかしいじゃないですか。 ……好きな人に見られるの。」 顔を上げてこちらを見た首藤さんは、濡れた髪をオールバックにしていて、その綺麗な顔立ちにさらに心臓をやられる。 「天宮さんって可愛い事しか言えないんですか?」 「何言ってるんですか?」 「可愛すぎてもう抱きたいって言いました。」 「それは言ってないです!……もう黙っててください。」 「はいはい。 ほら、俺もう洗い終わったしこっち来て。」 「……見ないでくださいね。」 「それは無理でしょう。 俺が全身洗ってあげるのはダメですか?」 「はい?そんなこともしたいんですか?」 「はい。」 もう結構想像の上を来すぎていて、お尻の洗浄も許してしまったしもうこの際なんでもいいか、という気持ちになってくる。 恥ずかしがってても可愛い可愛い言われるだけだし。 「もういいですよ。今日はなんでも許します。」 「いいんですか?無理してませんか?」 さっきまでノリノリだったのに、また急にしょぼんとする。 その様子をみていたら、なんだか可愛く思えてきた。 「いいですよ。無理してません。 首藤さんの甘やかしたいレベルが俺の想像以上で、結構びっくりしてるだけです。」 「俺やり過ぎるところがあるので、本当に嫌だったら言ってくださいね。」 「大丈夫ですよ。 この際もうとことん甘やかしてもらいます。俺面倒くさがりなんで丁度いいかも。」 お風呂ってそこそこめんどくさいし、そう思えば座ってるだけでいいなら楽だ。 といいつつも隠せるだけ手で隠して湯船から出る。

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