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第67話

「先に乾かして良かったのに。」 「いえ。天宮さんがまた風邪をひくのは困ります。」 「あれはたまたま傘を忘れたからで、そんなに頻繁に風邪ひきませんよ。」 「え、そうなんですか?俺に言ってくれたら傘くらい貸したのに。」 「それだと首藤さんが困るじゃないですか。 それに自転車だったから、すぐ帰れると思って。けどその日、夕方まで断水だったんですよね。」 「尚更傘貸せばよかった。次は声掛けてくださいね。」 「はい。」 こんな呑気に会話してるけど、この後俺たちやるんだよね。 もうそこに意識を持っていかれすぎて、会話できてるか自信ない。 「はい、乾きました。 俺も適当に乾かしてから行きますね。」 「はい。」 先に部屋に戻ったはいいけど、どうすればいいかわからずにそわそわしてしまう。 本でも読むかと机にあった読みかけの本を開いたはいいけど、何も入ってこない。 だって出すとこに入れられるのとか普通に怖いし、 俺も女の人みたいに声出してんの想像したら恥ずかしいし、 その声とか他にもふとした時に首藤さんが萎えないか心配だし、 もういろんな考えがぐるぐるして、本なんか読める状態ではない。 「おまたせしました。 本読んでたんですか?」 「はい。」 「キリがいいところまで待ちますよ。」 「いえ、大丈夫です。 ……この後の事考えると全然集中できなかったので。」 本を閉じようとした俺を気遣って言ってくれたんだと思うけど、一文字も頭に入ってこなかったから、今閉じてもなんの問題もない。 「そうでしたか。」 ベッドに座っている俺の斜め前あたりで立ち止まる首藤さんを見上げて、自分の隣に座るよう促す。 「首藤さん。」 「はい。」 無言で手を広げれば、微笑みながら抱きしめてくれて、優しく頭を撫でてくれる。 特に何も言わなかったけど、それが余計に心を落ち着かせた。 それでも不安とか恐怖がなくなるわけじゃないけど、まあなんとかなるだろうくらいの気持ちにはなってきた。 「あの。」 「はい。」 「今日はもう既にいろいろ許しましたが、……この後は特に許可とか要らないので。」 「わかりました。 嫌なことがあれば止めてください。」 「はい。」 「まだ不安ですか?」 「……バレてました?」 「はい。」 「初めてのことが多すぎて……。」 少し体を離されたと思えば、まずはそっと口付け。 今日は唇をノックされる前に軽く口を開けてみる。 それを待っていたかのように舌が入ってきて、俺の舌を誘い出す。 互いの舌の交わる音に酔っていたせいで、乳首を刺激されるまで服の中に手が入っていることにすら気づかなかった。 そこを弄られるだけで反応してしまって、塞がれている口から時折息が漏れる。 「ばんざいして。」 唇が離されたと思うと、上半身裸にされる。 「首藤さんも脱いでください。」 俺の言う通りにシャツを脱ぎ捨てた首藤さんの体は、さっきチラッと見た通りのいい体つき。

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