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第71話

12月24日。 俺は昼間から首藤さんのお家にお邪魔していた。 「いっぱい食べてね。 これとこれと、あと食後のケーキは廉の手作り。天宮くん来るから昨日の夜から張り切ってたのよ〜。」 「そうなんですか?」 「しかもお兄ちゃんここ最近、夜中にケーキ作る練習してたんだよ。 先生に美味しいの食べてもらいたいからって。」 「ちょっと母さんも春夏もバラすなよ……。」 「えー、だってほんとのことじゃない。ねぇ?」 「うんうん。 お兄ちゃん、先生のこと大好きだもんね〜?」 「まあそれは間違いない。」 俺のために忙しい中練習してくれたのも、前の夜から頑張ってくれたのも、嬉しい。 あとこうやって俺を家族の輪に入れてくれていることも、まるで家族になれたようで嬉しい。 「どうしました?美味しくないですか?」 「いえ、どれもすごく美味しいです。」 「よかった。」 「ありがとうございます。 いろいろと準備してくれたのも、こんな楽しい場に呼んでくれたことも。」 「こちらこそ、来てくれてありがとうございます。」 一昨日も今が一番幸せとか思ったりしたけど、今日も今が一番幸せかもしれないと思う。 「あ、お兄ちゃんが先生泣かした!」 「違うんです!嬉し泣きというか、幸せ泣き?みたいな……。 すみません、すぐ止まると思うので。」 「いいんですよ。」 隣に座っていた首藤さんが、そっと背中をさすってくれる。 そして、 「あ、俺のだから見ないで。」 首藤さんのお母さんと春夏さんにそう言って、さすってない方の手を俺の顔の前に広げた。 「うわ出た。 お兄ちゃん独占欲強いよね。過保護だし。」 「ほんとね。誰に似たんだか。 天宮くん、愛想つかさないであげてね。」 「そんなの、俺の方こそ……。」 「俺は愛想尽かすことはないですよ。」 「俺もないです。」 「あら、ラブラブね〜。」 「私も好きな人欲しいなぁ。」 「付き合うなら大切にしてくれる人にしなよ。 あと交友関係とかお金使いが荒くない人。あ、酒癖悪いとかもダメだな。あと、」 「はいはい。 先生、お兄ちゃんの愚痴いつでも聞くからね。」 「え、なにそれどういう意味?」 「別にぃ?」 「ふふ、仲良いですね。」 「やっぱり笑った顔が一番可愛いですね。」 「もう。他の人が見てる前でそういうこと言わないでくださいよ。」 「確かに。恥ずかしがってる顔を見られるのは困りますね。」 「そういうことじゃないけど……。」 「イチャイチャしてるところ悪いけど、これ、天宮くんにクリスマスプレゼント。」 首藤さんのお母さんは俺に綺麗に包装された箱を差し出す。 「えっ?俺に?いやでも、俺何も用意してないし……。」 「それならさっき菓子折りくれたじゃない。 それに、ここに来てくれたのが一番のプレゼントだから。よかったら受け取って?」 「……ありがとうございます。」 包みを開けるとそれは色とりどりのマカロンたちだった。 「廉に甘いもの好きだって聞いたからマカロンにしてみたんだけど、大丈夫だった?」 「はい、大好きです。」 「よかった〜。」 「本当にありがとうございます。大事に頂きます。」 「じゃあ私からも!」 「え、春夏さんも?」 「いつも勉強教えてくれるお礼も兼ねて。 はい、これ。」 お礼って言われても、家庭教師をさせて頂いてるのはこっちだし、しっかりお金も頂いているのに……。 「入浴剤?すごくいい匂い。」 「そう!あとボディクリームも入ってるの。 いろいろご入用かと思って。ね?」 確かにめんどくさがり屋の俺でも、最近は美容に多少関心があるけど……。 そして付き合ってるんだからそういうことするだろうと想像されるもわかるけど。 「……ありがとう。」 恥ずかしすぎる。 「おい春夏。天宮さんのエロいとこ想像すんなよ。」 「はい?そういうこと言うお兄ちゃんが想像してるんじゃないの?」 「俺は恋人だからいいんだよ。」 「うわ、引く……。」 「ふたりとも止めてあげたら?天宮くん真っ赤になって困ってるよ?」 「天宮さん(先生)可愛い!」

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