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第73話

「首藤さん。」 「ん?」 「せっかく貰ったし、これ使って一緒にお風呂入りませ……、入らない?」 「もちろんいいよ。 きいちが誘ってくれるなんて嬉しいな。」 パーティーが終わって、首藤さんと俺の家に帰ってきた。 今日はこのまま首藤さんがうちに泊まることになっている。 一旦名前は名字呼びで許してもらったけど、タメ口で話すって慣れないな。 「だって……、する時は首藤さんが準備するって約束したから……。」 ただでさえ負担をかけるのに、めんどくさがりな俺に毎回準備からさせるの嫌、が3割で、あとは下心だ、ってこの前言ってた。 「あー、、可愛い。 俺浴槽洗ってくる。早く風呂入ろう。」 「……うん。」 「きいち。お湯ためてる間に先に体洗っちゃう?」 ほんとに手早く掃除してお湯をはるようにして、部屋に戻ってくる。 「うん。」 一昨日にもうすべてさらけ出したけど、改めて考えるとやっぱり恥ずかしい。 「ゆっくりおいで。」 ささっと裸になる首藤さんと違って、なかなか思い切れない俺の頭を微笑みながら撫でて、先に入っていく。 余裕だ……ずるい。 俺も後を追って風呂場に足を踏み入れる。 「好きな人とのお風呂って、ドキドキするとかないの?」 頭を洗われながら聞いてみる。 「ん?してるよ。というか風呂だけじゃなくて、もうずっとしてる。」 「そのわりには余裕そう。」 「好きな人の前ではカッコつけたいからね。」 「え、そんな理由?」 「そうだよ。 ずっとドキドキしてるくせに、カッコいいって思われたくて余裕あるふりしてるんだよ。」 「そうなんだ。……可愛いですね。」 「可愛いでしょう? 好きな人の前ではみんなそんなもんだよ、きっと。」 「……俺は恥ずかしいとこばっか見せてる気がする。」 「そんな事ない。きいちはカッコいいし可愛いよ。」 「褒めても何もでないよ?」 「ふふ、いいよ。きいちと風呂入れてるだけで十分。」 首藤さんがくれる言葉は、いつも俺の心を暖かくしてくれる。 本当に心から思ってるような幸せそうな顔をして言ってくれるから、俺も自然と幸せな気持ちになる。 「ねぇ首藤さん。」 「んー?」 「俺のこと好き?」 斜め上を見るようにして振り返る。 「好きだよ。」 そうすれば優しい微笑みとその言葉が返ってくる。 「……俺も。」 「あー、可愛い。キスしていい?」 「うん。」 泡がついた手で俺の頬に触れる。 チュッと音を立ててすぐに唇は離れていく。 「風呂どころじゃなくなるから、この続きは後で。」

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