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バトル5
クジャクは理解できない。
キイチは何を怒ってるんだ?
キイチは死んだままで居たかったのか?
思考も感情も活動も何もかもを停止して、腐り落ち死んでいたかったと?
ただの肉、腐るだけの肉になりたかったと?
クジャクもゲームの度に死ぬが、あれはアレで嫌なモノだ。
次に目覚めるまで全てが停止しているのだから。
アレがずっと続くことだろ?
死ぬってことは。
それは何もない、ことだ。
もったいない、そう思ったのだ。
だからキイチをトパーズにした。
唯一無二の【宝石】 に。
それに身体を生き返らせ、呼吸が戻ってからは、キイチはとても悦んでいた。
すっかり馴染んだクジャクのペニスに泣いて悦び、気持ちイイと泣い喚いたのだ。
だからクジャクも可愛くて嬉しくて、何度も何度もキイチの中で放ったのだ。
キイチだって悦んでくれたのに。
キイチに欲しがられて、クジャクは嬉しかったのだ。
まだ忘れているようだ。
それは仕方ない。
目覚めたばかりの宝石は不安定だから。
無機物は自分の宝石を愛する。
宝石だけが無機物の仲間であり、パートナーなのだ。
次のゲームでは一緒にいられなくても、このゲームの間にはその宝石しかいないし、このゲームがいつまで続くのかも分からないのだから、その間ずっと一緒にいたいのだ。
キイチの怒りは理解できないが、だが、キイチに機嫌を直してもらう必要はあった。
これからずっと一緒なのだ。
ゲームによっては数百年かかることもあるし、まあ、明日終わるかもしれない。
だからこそ、キイチと仲直りする必要があったし、クジャクはキイチにまた入りたかった。
こんなに可愛いと思った宝石は初めてだった。
「死なないのか、化け物」
キイチが低い声で唸る。
怒り狂った猫みたいでかわいかった。
小さくて凶暴で、肉食の。
でも可愛い生き物。
クジャクはキイチに嫌われないために曲がった首を元にもどす。
折れた肋ももう治ってる。
だか、素晴らしい。
無機物の身体はそれなりの耐久性がある。
なのに、キイチは簡単に壊すことができた。
与えた身体の特性をもうつかいこなしてる。
「キイチ、俺は君が何を怒っているのか全く分からないんだが」
正直にそう言うと、キイチの毛かまた逆立った。
可愛い。
可愛いすぎる。
クジャクは思う。
小さいのに弾けるほどの元気の良さと、爆発するような意志力だ。
このエネルギーに惚れ込んだ。
自分のにしようと思った。
「とにかく怒っているなら謝るよ。初めての2人の行為を覚えていないのは残念だけど、何、そのうち思い出すよ。気持ちよいって泣いたことを思い出したら、また気持ちも変わると思うから、思い出すまでは我慢してくれない?」
クジャクの言葉は余計にキイチをキレさせただけだった。
「てめえはどうやって殺せるんだ?」
キイチは歯を剥く。
キシャァ
猫の攻撃音のような呼気を吐き出し、逆立てた髪に、トパーズの目は燃え上がる。
いわゆる綺麗な顔ではないが、子猫っぽい顔立ちのキイチの野性っぽさが際立つのか良かった。
可愛い凶暴なクロネコみたいで、人間よりも猫が好きなクジャクにしてみれば、もう可愛くてたまらなかったが、怒るからそれについては何も言わないでおくことにした。
「君が死んだら俺は死ぬ。少なくともこのゲームでは」
ゲームの基本を教えておく。
キイチと少しでも一緒にいたい。
そう思ってる。
それにはゲームに脱落しないことだ。
「俺達の敗北条件は君が死ぬこと、それだけだ」
最後まで生きていた者が勝ちのゲームなのだ。
「それにキイチ、怒ってるけど、俺は君を抱いたのは甦らせるためだけじゃなかったんだよ。もちろん可愛い君の中に入って沢山だしたかったのは認めるよ。でも、理由は他にもあるんだよ」
キイチを抱いた感触を思い出しながらクジャクは言う。
呼吸を取り戻してからのキイチがどれほど可愛かったか。
その感触を思い出しただけで、勃起しそうだ。
いやしてたかも。
キシャァ!!
キイチが呼気を吐き出し真っ直ぐに蹴りを股間に向けてきたので、慌ててクジャクは転がって避けた。
キイチの蹴りは壁に突き刺さった。
危うく潰されるところだった。
直ぐに治るが、痛みは本物なのでゾッとする。
「避けれるじゃねぇか、てめえ!!」
キイチが怒鳴る。
「まあ、君と俺は思考が繋がるようになってるからねぇ」
そこは言っておかないといけないポイントだ。
バトル中、宝石に指示をだし、宝石の動きを知るためにある程度の思考や行動はリアルタイムで互いに共有できるようになっている。
分かっていても、まさかそこまでされるとは思わなかったので、キイチの攻撃を受けてしまったが、もう理解はしているので受けないように全力はつくす。
痛いから。
クジャクはキイチに気持ち良いことしかしなかったのに。
キイチは酷いことしかしてこないのは切ない。
「キイチとにかく冷静に。俺はキイチの身体を弄る必要があるんだよ。キイチだって死にたくはないだろ?」
クジャクは話し合いを試みる。
「弄る!!」
キイチがまたキレる、クジャクは転がった。
キイチの蹴りがまた壁に穴を開けた。
キイチの目が金色に光り、髪が逆立ち、凄まじく可愛いがヤバい。
だが、話し合いをしなければ。
時間がないのだ。
時間が。
クジャクの予想ではそろそろアイツが仕掛けてくるはずだ。
卑劣なことでは無機物の中でもトップクラスのアイツが。
「新人潰し」のガラスが。
ガラスの戦い方はそういう戦い方だから。
「てめぇはしちゃいけないことをした!!ソイツは絶対に許されねぇことだ!!」
キイチは話を聞く気かないのほ良くわかった。
困った困った。
クジャクが悩んでいると、部屋の窓ガラスが吹き飛んで、外からソレかやってきた。
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