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Vs オパール
ガラスを割って飛び込んできたのは、真っ白な少年だった。
髪も肌もなにもかもか白い。
ただ目だけは青や緑や黄色が滲む。
見事な遊色のトパーズだった。
【宝石】だとすぐにキイチも理解した。
だから即、殺意を向けていたクジャクから、飛び込んできた少年へと意識を切り替えた。
クジャクは感心する。
戦う意識がちゃんとある。
何も訓練しない前からコレとは。
素晴らしい。
キイチとならファイナルステージに行けるかもしれない。
だが、ガラスの【宝石】は甘くない。
ガラスは【ルーキー殺しのガラス】と言われている。
目覚めたばかりの宝石を狙うことで有名だ。
まだ戦うことに慣れていない宝石を早めに潰しておくのがガラスのやり方だ。
「キイチやり合うな!!トパーズは【宝石】の中でも最古参だ。目覚めたばかりの君では無理だ」
クジャクは指示を飛ばす。
声だけじゃなく脳にも直接話しかけているが、キイチはそれをすんなり受け入れた。
「やり合わねーよ」
キイチは断言する。
キイチは迷うことなく、トパーズが飛び込んできた窓に向かう。
窓から逃げるつもりだ。
正しい。
キイチの今の身体なら、この高い階から飛び降りても無事だろう。
それくらいの耐久性が今の身体にはある。
「ダメ、逃がさない」
綺麗な声でトパーズが言った。
だがキイチはもう飛び降りていた。
クジャクはキイチの視界に自分の目をあわせる。
キイチが見ているものをこれで見れるようになる。
高い建物から舗装された道路へと落ちていくキイチの視界が見えた。
キイチは叫び声をあげ、歩道の人達に今から人が落ちてくることを警告していた。
なんて優しい。
クジャクは感心する。
人間の一人や二人潰れたところで問題ないのに。
キイチのこういう所にクジャクは興味を持ったのだ
だがキイチの脚が歩道のアスファルトを踏むことはなかった。
何故ならキイチは地面に着く前に腕を捕まれ、宙に吊り下げられていたからだ。
キイチの腕を白い腕が掴んでいた。
その腕がキイチを宙に繋ぎ止める。
「へ?」
キイチは間抜けた声を出した。
落ちてくるキイチを驚いて見上げていた通行人達もザワついた。
キイチを宙に吊り下げている白い、細くて美しい腕は。
その腕には身体がなかったからだ。
宙に浮かんだ二本の腕がキイチの腕を掴んでいた。
そう、腕だけが。
クジャクはキイチの目からではなく、部屋の中にいる自分の目で見た。
部屋の中にまだいる、オパールを。
オパールには腕がなかった。
両腕が付け根から消えていた。
オパールは腕を切り離し、腕だけでキイチを追っていたのだ。
「逃げても無駄です」
部屋の中からオパールは言った。
オパールが髪を振る。
白い長い髪がキラキラと揺れて
破れた部屋の窓から腕に引きずられるようにキイチが戻ってきた。
「なんだよ、お前、その腕。ロケットパンチかよ!!」
キイチは怒鳴る。
また随分と古い言葉を、とクジャクは思った。
またオパールが髪を振った。
キイチの腕を1つずつ掴んでいた2つの腕から一本が離れた。
今、一本の腕だけでキイチは天井近くに吊り下げれていた。
細くて華奢な腕なのにスゴい力だった。
「初めまして。ボクは白と申します。無機物【ガラス】のパートナー、【オパール】です。ルールに従い貴方を殺させてもらいます」
丁寧に白は言った。
ガラスの相方。
白い切り裂き魔、白だ。
白の腕の一本は白への身体へ元通りに引っ付いていた。
白はその腕を指先まで伸ばしてキイチへと向ける。
白は素手で肉体的を切り裂く。
「貴方を切り裂いて核を見つけて潰します」
白は宣言した。
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