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関係性

「これで2時間は稼げる」 クジャクは言った。 結界を張った街の中では、今ではガラスの【目】達がキイチにもわかった。 ぼんやり青く光って見えるのだ。 スズメ カラス 目に見えにくい小さな羽虫 通行人 その飼い犬 ありとあらゆる姿をとり、その数は100は余裕で超えていた。 青ざめる。 こんなにも沢山の目が、こんな形で。 結界が無ければこの【目】に気付くこともないだろう。 【目】達は今はガラスのコントロールから切り離され、自動運転モードになっている。 通行人と犬は街をぐるぐると周り、他の目達も街をぐるぐると飛んだり、歩き、這い始めている。 分かっていなければ、コレが魂の無い目だとは分からないだろう。 クジャクは落ち合う約束をしていた公園のベンチに座っていた。 クジャクは苦しそうだ。 これだけの大きな結界を張るのは大変らしい。 キイチを依代にして張った結界の大きさは街一つ。 部屋に張るのとはわけが違うらしい。 苦しそうだから。 息を荒らげて、頭を抱えるくらい苦しそうだから。 キイチは。 「悪い、ありがとうな」 礼を言わざるを得なかった。 絶対に言いたくなかったのに。 クジャクの顔が一瞬で笑顔になる。 が、顔色は悪い。 「キイチが喜んでくれるなら嬉しい」 深い声が喜びを含んでいる。 キイチは礼は言ったが、イライラもしている。 「キイチ早く行って」 クジャクが動かない身体で言ってるのに、クジャクに対する怒りはある。 だが。 確かに。 クジャクのおかげではある。 だが、だが。 それでも。 でも。 「すまねぇ」 キイチは言って、クジャクに背を向けた。 礼を言うべきだと思ったから言ったのも本心で。 キイチは走る。 家族を探しに。 まだ家族があそこに住んでいれば。 この街から数駅先だ。 全力で駅へ向う。 そして、キイチは考えないようにしていた。 家族のことだけ考えようと。 この街に結界を張るために。 クジャクとしたことについては。 絶対に絶対に考えないないようにしていた。 クジャクの唇。 指。 舌。 「うわぁうわぁ うわぁ!!!!」 やはり思い出してしまって、走りながら叫んで、待ち行く人たちから振り返られながら。 頭を抱えながら、走りながら。 キイチはそれでも。 そうするしかなかったのは納得していた。 だが。 やはり。 クジャクにしかこの怒りをぶつけられない、とも思っていた。 だって。 だって。 クジャクはキイチに。 「うわぁうわぁっっ!!!」 キイチはまた叫んでしまったのだった。

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