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関係性 2
「ガラスから逃げるためには、力がいる。今の俺では無理だ。ガラスは宝石と何度も関係をたかめあっていて、今、白の身体が万全でなくても、白の核からだけでも力を引き出せる」
クジャクは言った。
「キイチをガラスの目から逃して家族に会わせるには俺の能力を高める必要がある。キイチに依代になってもらわないと」
無機物は宝石との関係を高めることで、能力を引き出すことができるのだと。
クジャクやガラス、【ディフェンス】、【プレイヤー】と呼ばれる【宝石】のマスター達は、直接攻撃として使うことは許されないが、ゲームを有効に使う手段としての能力は持っている。
ガラスの【目】
クジャクの【結界】などがそれに当たる。
例えば前回、白がキイチを襲った時、ガラスの【目】達は白にまにあわなかった。
ガラスが何も理解していないキイチを殺す方が確実だと判断して、まだ宝石として生まれたばかりのキイチを殺すために、【目】よりも速く【白】を先にキイチに向かわせたからだ。
目のない状態での攻撃なので、白は見えない場所にいるキイチへの攻撃を諦めたが、ガラスの【目】のアシストがあれば、白はどこまでも、キイチを追えていたはずなのだ。
「俺が完全な結界を張る前にガラスは攻撃したかったのが裏目に出たんだよね」
クジャクは言った。
とにかく。
とにかく。
クジャクは今のままではガラスの目を晦ますための大きな結界が張れないのだ、とのことだった。
「俺とキイチの関係を高めないと」
クジャクは言う。
「どういう意味だ?」
キイチが聞くと、クジャクが頭を搔いたり、モジモジしたりしたので、何かわかった。
セックスすることで、このクジャクはキイチを蘇らせたのだ。
無機物達にはセックスはセックス以上の意味がある。
さすがに後ずさる。
それは嫌だ。
だけど。
家族に会いたい。
会いたい。
会いたいんだ。
『キイチ、それは水晶だ。ほら石英の中に柱状になってる結晶があるだろ、これが水晶だ。安定した場所でなら100年で1ミリ成長する』
父親が川で拾った石の中に水晶の結晶をみつけてくれた。
石の割れ目に水に濡れキラキラ光を反射するそれは確かに六角状の結晶だった。
『百年で1ミリしか成長しないの?』
キイチは驚嘆する。
じゃあこの小さな水晶でさえ何百年もかかってここにあるのだ。
石である水晶が成長するというのにもショックを受けるし、なによりその時間の大きさに。
『ああ、そうだよ。石は歴史なんだと言っただろ?石がここでお前の手に来るまで、長い長い時間があってここにあるんだよ。キイチ、ただの石なんてないんだ』
父親は言った。
そんなことが思い出された。
それを笑って見てる母親。
はしゃぐ妹。
川の水の飛沫。
40年。
40年。
キイチは家族に会わなければならなかった。
キイチの決断は常に速い。
ムカつくが仕方ない。
クジャクが慌てたように言う。
「・・・キイチ、最後までしなくて良いんだ。俺の身体がキイチと触れ合うことで、能力が拡大されるから。そりゃ、最後までしたいけど・・・とりあえずは」
そして、クジャクの正直さには一定の評価を与えた。
黙ってれば、クジャクはキイチを好きに出来たのにそれはしない。
それに少なくとも、クジャクは今のところ、キイチに正直ではある。
40年経ってることもうちあけたし、
「仕方ねぇ、好きにしろ!!」
キイチは腹を括った。
クジャクに自分に触れる許可を与えたのだった
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