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関係性 3

「いいの?」 クジャクはオドオドと言う。 デカい身体をモジモジさせて。 イラつく。 「オレが良いって言ったんだ。二言はねぇ」 キイチは唸るように言う。 「・・・そう」 クジャクは深い声で言った。 その目が笑っていなかったか? その口元が隠しきれない笑みを浮かべていなかったか? 確認する前にキイチは抱きしめられていた。 だからクジャクの顔はもう見えない。 見えるのはクジャクの服だ。 その向こうに厚い胸板がある。 クジャクの身体は大きくて。 小柄なキイチでは大人と子供みたいで。 誰かの肉体に包まれるのは子供の頃以来で。 その感触に何故か安堵してしまった。 「待て、風呂とか」 これから始まることに、覚悟はしたが怯えてもいたキイチが時間を稼ごうとすると、クジャクは低いでも、はっきりとした声で言った。 ダメ。 そして強く抱きしめられる。 ああ。 拒否はしない。 これは必要なのだ。 家族に会うために。 でも。 誰ともそんなに近くに居たことがなかったから。 子供の頃、父や母に抱きしめられたのともそれは違っていたから。 戸惑っていた。 死体だった時に犯されたことは覚えてない。 生き返ってからのも覚えてない。 キイチには生まれて初めての性体験とも言える。 この年まで、女の子とキスしたことすらなかったのだ。 「キイチ・・・震えてる」 低く言われて、カッとなる。 「震えてねぇ」 その声はちゃんと出たし、ムカつく感じも出せたと思う。 「大丈夫。怖いことなんてしない」 背中をやさしく撫でられた。 ゾワッとした。 だが。 覚悟は決まってる。 「目を閉じて」 言われた。 どうすればいいのかなんて何1つわからないから、言われるがままに目を閉じた。 わらった気配がした。 だがそれは小馬鹿にした感じではなかったから許してやった。 唇に暖かい柔らかいモノが触れた。 柔らかい。 暖かい。 そっと押し付けられて離れる。 そしてまた、優しく触れる。 唇だとわかった。 男らしい分厚い唇なのだとわかってても、それは柔らかで。 そんなには。 そう 嫌じゃなかった。 触れては離れる。 触れては離れる。 こんなに優しく誰かに触られたことなんてなかった、と知ってしまった。 髪を優しく撫でられ、頬や目の上にも唇は落ちていく。 女の子がキスしてくれるなら、こんな風に優しくしてくれるのだろうか。 ふと思った。 自分がキスする夢想はしたことがあったけれど、キスされることは考えたことがなかった。 「ダメ。俺のことだけ考えて」 低い深い声が耳元で囁く。 優しくキスされるだけだったから、覚悟をしていただけにホッとしたせいか、その声に安心してしまったのは事実だ。 「キイチの嫌がることなんてしない・・・」 優しくキスを落としながら囁かれた。 目を閉じているから見えないが、クジャクの姿は、姿だけなら、一級品だ。 女の子なら、こんなに優しくキスされ囁かれたなら、夢見心地になるんだろう。 キイチはそう思った。 キイチにはそれは意味がなくても。 でも。 確かに。 なんでこんなに優しく触れられるんだろう。 キイチは驚く。 優しいキス。 その言葉の意味を知る。 キイチが人間のままだったなら、いつかは女の子とこんなキスをしたのだろうか。 キイチは軽く唇を啄まれるのも許した。 優しく触れられることが。 心地良いと。 生まれて初めて知った瞬間だった。

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