32 / 39

関係性 4

優しく何度も唇を、啄まれた。 ちゅっ 音をたてて吸われ、また重ねられる。 優しく背中を撫でられ、頬も撫でられ、また啄まれる。 優しい腕と唇に、なんだかボンヤリしてしまう。 唇と唇がくっつくだけの行為がなんでこんなに気持ちいいのか 「キスが好き?」 優しくあまく、深く低い声が囁く。 否定はしなかった。 また笑う気配。 でも、ムカつくにはなんだかふわふわして無理だった。 でもこれ以上何か余計なことを言ったらなら殴ってやろうかと思ってたけど、こんな時に限ってクジャクは何も言わない。 優しい唇が喉に落ちても、キイチはそれを受け入れていた。 ちゅっ ちゅっ 音に顔がのぼせてしまう。 だけど喉に与えられる甘さ。 なんでだか、なんでだか。 身体に熱が溜まり初めてて。 それが何故か股間に集まっていて、キイチは途方にくれる 気持ちいい。 気持ちいい、けど。 喉を初めてつよく吸われて、思わず声が出た。 小さな声だったけど、女の子みたいで、真っ赤になった。 思わず目を開けたなら、間近にクジャクの顔があって。 それがいつものヘラヘラした顔じゃなくて、真剣な顔で。 孔雀石の瞳で見据えられて、竦んでしまったのは、なんとキイチの方で。 だって、こんなの。 こんなの。 想定したことがない。 「怖くないから」 優しい声、また優しく喉に唇が落とされる。 でも。 熱が熱が。 もう溜まっていて。 キイチはモゾモゾ動かずにはいられなかった。 抱きしめられているから、クジャクの身体にソレが当たってしまうのを避けたかったのだ。 甘い軽いこんなキスだけで、ここがこんなになってるなんて知られたくなかった。 笑う気配がしたが、笑い声ではなかったから許した。 それどころではなかったし。 触りたかった。 そこに触って。 出してしまいたかった。 でもそれは。 でも、それもどちらにしろしなきゃいけないことなのか。 最後までじゃないが、することを約束したのだし。 出したい。 でもクジャクの腕の中でそんなことできない。 出来るはずがない。 でも。 「キイチ、触らせて?いいよね、最後までじゃないなら良いって言ったよね」 クジャクがそう言って、キイチに【約束をせまって】くれたから。 キイチは折れてやることができた。 これは。 約束なんだから仕方ない。 「勝手に触れよ!!」 キイチは真っ赤な顔で怒鳴った。 キイチは見えなくて良かった。 キイチは目を閉じていて良かった。 クジャクが笑みを必死で押し殺していたからだ。 それをみたらキイチは怒ってしまって、途中で中断していただろう。 「キイチ。キイチは気持ち良くなってればいい。目を閉じて女の子にされてると思って」 クジャクが言い訳を与えてくれたから。 キイチはそう思っているフリをする。 でもまた唇や喉に優しく落ちる唇は、男の大きな唇で、チャックを下ろしてそこをそっと握った指は大きな男のもので。 クジャクのもの以外ではないと分かってしまうのに。 でも。 キイチのそこは。 クジャクに握られただけで。 また大きくなってしまった。 余計なことは言わず、その指がいやらしく動き始めたから。 キイチはまた声を漏らしてしまった。 ふぅっ ひぅっ ビクン ピクン キイチの身体がクジャクの腕の中で震えた。 目を閉じたままのキイチを、クジャクは食い入るように見ていた。 それは獣のような飢えを押し殺した雄の顔だった。

ともだちにシェアしよう!