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「……疲れた」
怒涛のような歓迎会のあと、入寮する部屋への廊下を歩きながらつぶやくと、
「文系のおまえにはつらいよな、声もデカいし図体もデカいやつばっかだし」
中学からの親友な蓮池は、そう言って笑った。
「歓迎されてるみたいでよかったけどさ……俺のコミュ力じゃ期待を裏切りそう」
「慣れないやつには口悪いからな、辻元は。照れ隠しなのわかるけど、耐えられそうか?」
俺の性格をよく知っている蓮池は、人付き合いが苦手なのを察していつもフォローしてくれる。
この環境下で、素でいられる人間が一人でもいることは、ひたすらにありがたい。『地獄に仏』って蓮池のことだな……知ってはいたけど寮長だし、ホント助かる。
急展開だったこの1週間ではじめて、安堵のためいきをついた。
「まあ、でも安心しろ。ルームメイトは静かなやつだから。気にならないだろ、きっと」
朗らかに蓮池は笑ったけど、サラッと聞こえてきた単語に、俺は一瞬息がつまった。
「えっ! 一人部屋じゃないのか!? 空き部屋があるって聞いてたんだけど……っ」
「空き部屋ではあるよ。ただ、ウチは二人一部屋だから。相部屋になってない部屋があるって意味の『空き部屋』だけどな」
「じゃっ……じゃあ俺も相部屋になる、のか?」
「そういうことだな。ちょうど一人部屋になっちゃってるやつがいたから、そいつと相部屋」
すこし先を歩く蓮池はなんでもない感じで言ってくるけど、俺は頭を抱えたくなった。
おいおい……安心したのも本当に束の間じゃないか! ラッキーな余り方で気楽な寮生活をしてるやつの部屋に、俺はこれから世話になるのか? ――どうしよう、絶対恨まれる……!
「そんな緊張すんな。さっきの歓迎会にも顔出さないようなやつだけど……頼りになるやつだし、2年だしさ。先輩のおまえのことは立ててくれるって」
「しかも年下かよ……っ」
またさらに気まずさを感じる要素に、胃が痛くなってくる。
相手からすれば年上なんて余計にやりづらいし、面倒以外のなんでもないじゃないか! 俺、部外者なんだぞ!
そこまで考えてから、――あれ? と、思考が止まる。
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