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 友達と話す守屋は、夏休み前に先生が言っていた通りの人物だった。  中心で騒ぐわけじゃないけど輪の中にはちゃんといて、でも見守るように控え目に笑っていた。  その落ち着きが雰囲気をさらに大人びて見せていて、妙にカッコよかった。器が広そうだとも思ったけど、予想以上かもしれない。  ――対して、この俺の不器用さ。  仲良くなるなんて、一体あと何年いっしょにいたらなれるのだろうか。  上手くいかない歯痒さにストレスはたまる一方で。ストレスがたまれば、当然あっちもたまる。 「……んっ」  守屋と話したい、守屋と仲良くなりたい欲求の中には、もちろん守屋にさわりたい、さわられたい欲求も含まれる。  おなじ部屋で生活していて、声も匂いも近くて、おまけに色っぽい裸まで見てしまって。  それが好きな相手なんだから、興奮するなというのはムリな話だ。  手をのばして触れようと思えば、いくらでも触れられるのに。2週間寝食をともにしたって、あいさつすらにこやかに交わせない。そんなもどかしさから、とうとう俺は自分を慰めるため――『自慰』という暴挙に出た。 「は……あ、っ」  数週間ぶりのせいかすごく気持ちいい。よし! て、思っただけで勃ったし。まだはじめて数分なのに、擦っている先はすでにぬるついている。  でも、ひさしぶり以外の理由もあるのは、わかっている。 「ん、っ……もり、や」  いま、妄想の中にいるのが、守屋だからだ。だからすごく――気持ちイイ。  本当は、この寮に来てから何度かしようとは、がんばってみた。でも、夜は寮に帰る時間がカブるから隙がない。水泳部の練習がおわるのと俺が予備校から帰るのは、ほぼ同時刻。  なら昼間にと思うけど予備校に行く前や休みの日は、先生に教えてもらっているから時間がない。  ――でも、今日は。  水泳部の練習が休みで、なにやら夏休み恒例のゲーム大会(?)を談話室で開催しているらしくて。誘われたけど、ゲームはやらないと断った。すこし前に歓声が聞こえたから、きっと盛り上がっているんだろう。  守屋はもちろんこの部屋にいない。  だから俺はいま、好きなだけ自分を慰めることができている。

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