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「ん、ン……」
ゆるく輪をつくった指で先のくびれたあたりを擦ると、ふわっとした浮遊感が腰を浮かせる。じわじわと甘い感覚が背中を這いあがってくる。
「ん、っ……もり、や……っ」
たまらなくて、名前を呼ぶ。だっていま俺のを擦る手は、自分のものじゃない。大きくて、夏陽に灼けた――守屋の手だ。
すこし節の太い指が、ねっとり滲んだ液をすくう。その濡れた指で、先のところを回すようになでる。てのひらで包んで、ゆっくりゆっくり……扱きあげる。
『……気持ちイイですか?』
かすかに笑みを含んだ声で、耳許にささやかれる。普段は抑揚がないのに、いまはためいきが出るほどやさしくて甘い。
「ん……気持ちい、い……っ」
素直にそう伝える。間近に守屋の匂いを感じながら、その肩口に顔をうずめながら。
いないはずの守屋をこんなに近くに感じるのは、俺がオナる前にくすねた洗濯物のオカゲだ。ベッドの上にたたまれていたいちばん上を取ったら、それは守屋の下着だった。しかもパンツのほう。
生々しすぎる! ――と、思ったけど。生々しすぎるのが、余計にエロい気分を盛り上げてくれた。
男に欲情してるし男の下着盗んでるし、なんかもういろいろ俺ヘンタイじゃん! とか、情けなく思う部分もあるんだけど。
この気持ちよさには抗えない。すこしもやめられる気がしない。
「ん、んっ……すごく、い……いっ」
声なんて出さないほうがいい。でも、どうしても抑えられない。
『……もっとして欲しいですか?』
妄想の中の守屋は、言いながら擦りあげる手をはやめる。はやめているのは俺だけど。
「んっ……して、ほしい……」
『じゃあ、俺の名前……呼んで?』
期待する俺に、守屋はそう返してくる。頬に短く口づけながら、そのまま首にも、肩にもくちびるを寄せながら。
自分のあふれんばかりの欲求不満が作り出した、ただの妄想だって頭ではちゃんとわかっているのに。本当にはありえないから……こんなことしているくらい、なのに。
そんな声で、そんな目で……そんな色香で、ねだられたら――
「ん、はぁっ……せ、い……誓っ」
呼ばないわけ、ないじゃないか。
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