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「先輩、ちゃんとやってますか?」
「やって、る……よっ」
「全然、勃ってないですけど。オナニーってイクの含めてですよ……わかってますよね?」
「う、そ……っ」
そんなの聞いてない! と言ったところで、きっと「言ってませんから」とバカにしたように返される。
でもこの状況でイクとか、ムリだろ! 見られながら絶頂感じられる、なんてどんなメンタルだ。
恋人同士のプレイ、とか……そんなのであれば盛りあがるのかもしれないけど。
俺と守屋は恋人同士なんかじゃない。ただの『被害者』と『加害者』だ。
「……辻元先輩」
ひたり、と。突然、熱とやわらかな感触がした。
それが、頬に添えられたてのひらが――守屋のあの大きなてのひらの感触だなんて――信じられなくて。ただただ、まばたきをくりかえして守屋を見つめる。急に、やさしくしないでほしい。
「さっき……どんな妄想してました?」
吐息の混じる低めた声は、からかうようでもあるけど、普段と比べものにならないくらい、やさしく響く。
――心音が、はやくなる予感。
間近に見返してくる瞳も、声とおなじにやさしく感じて。急かされるような、苦しいためいきがこぼれそうになる。
「……どんな、て」
「俺になにかされる妄想?……それともなにかする妄想?」
言いながら、守屋は指の背で俺の頬をなでてくる。ゆっくりした、くすぐるような動かし方に首が縮こまった。
やばい……ほんとに、ドキドキしてきた。
問いかけてきた声もなんだか深くやわらかく、なった気がして。なでられているところから、じわっと熱がうまれる。
その熱にひきずられるように、軽く噛んでいたはずのくちびるから言葉がこぼれていく。
「さ、される……妄想」
「……どんなことですか?」
「いっ……言いたくない」
「言いたくないなら、言わないとですよ?」
多少空気が和らいだのは気のせいだったのか、守屋はまた意地悪く笑みをつくった。
片眉をあげて見つめて『はやく言え』と、言葉のない催促をしてくる。
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