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「辻元先輩、よく考えてください。嫌いな人間に3回も中出しする男がどこにいるんですか?」
「……えっ?」
「それと、俺はあなたに好かれてるのは知ってましたよ?」
「な……えっ!?」
ためいきも交えつつ守屋は言ってくる。そんなふうに言われても、俺はなにも返せなかった。
顔を赤くして布団を握りしめて、呆れ顔の守屋を見返すことしかできない。
でも、3回も中出しされてたのか……ということだけは、しっかり思った。
自分が何回イカされたのかもわからなければ、そもそも守屋が何回したのかも記憶がない。それだけ気持ちよかったということだけど、いまはその事実がひたすら恥ずかしい。
「……あなたよく、美術室から水泳部見てたでしょ?」
同意を求めるように守屋は問いかけるから、俺もやっと言葉が見つかる。
「み、見てたけど……なんで、知って……」
「あなたから見えるなら、俺からだって見えますよ」
「た、たしかに……」
言われてみれば、うなずくしかないことだ。守屋からも見えるかも……なんて気にしたことなかった。
毎日のようにジロジロ見ていた分、気づかれていたのは余計に恥ずかしい。まるでストーカーみたいだ。ちがう、とは言えないかもしれないけど……
ちょっと後悔する気持ちもあるけど、俺を見つけてくれていたことは単純にうれしい。
「廊下にも、のぞきに来てたでしょ?」
「うっ……い、行った」
「水泳部に興味がある人なのかと思ってたんですけど……ちがいました」
「ち、ちがう……って?」
もう答えがわかっているはずなのに、訊き返してしまった。堀った墓穴に自ら入ったことに、俺の頬は熱くなる。
守屋は、それを見て小さく笑った。
「辻元先輩は、俺のことがすきでした」
間近で見つめられながらそう言われて、否定できない俺は黙って顔を伏せるしかない。うつむく顔の熱さと赤さが上限を越えているけど、どうしようもない。
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