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お互いに新鮮味がなくなると、嫌がる過程はテンプレ化して、ただこなしていくだけの予定調和に見えてくる。
それは、セックスも然りだ。
「まあ、そういうことなので……たのしみにしててください」
「は? いや、ちょっ! ちゃんと説明――んっ」
じたじた暴れだすので、とりあえずくちびるをふさいでやった。抗議の途中でも、この人のくちびるはとても素直に俺のそれを受け入れる。
軽くふれるだけの短いキスをして、すこし見つめる間をつくってからまた啄むように繰り返す。
「ん、ん……っ」
「……開いて、くちびる」
そうささやくと、ためらうようにゆっくりとくちびるが開かれる。のぞいている舌が期待するようにふるえた。
そのふるえを止めてやろうと、求められている舌をからめる。応えるように擦り寄る舌を吸いあげる。こぼれそうな唾液すら逃がさないように角度を変えつつ、ぴったりとくちびるで蓋をする。
そうすると、真尋さんは必ず――
「ん、ふぁ……もり、や……」
ねぇ、もっと……なんてつづきそうな、焦れた吐息をこぼしてくる。感じる粘膜同士の熱とやわらかさに、まぶたまで閉じて。
この人マジでキスが好きだな、とバレない程度に俺は笑った。こういうところは素直なのに、口はだんだん生意気になって。
まったく本当に――
「……かわいいですね、真尋さん」
「――んっ!? な、なんだよっ……急に」
いつも通りからかう一言がくると思ったんだろう。声を上擦らせるほどの動揺に、俺は何度か胸中でうなずいた。
「気持ちよさそうに……目、閉じてましたよ?」
「そんなこと……っ」
言わなくていいとつづくだろう言葉の先に回って、シャツの上から空いている左手を這わせる。だいたいこのへんだろうと見当をつけて、胸を掠めるようになぞりあげた。
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