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「……見せて」 「ん……」  すこし顎を上向かせて、口を開けた。ちょっとでも動けばこぼれそうな量だから、舌がひきつりそうだけど、がんばって耐える。 「すげーエロい」 「……ん」  俺も、そう思う。  それに、舌が熱い……  勢いであたった喉も熱かったけど。あと思ったよりは、さらっとしてるし―― 「いま……飲みましたね」 「ん……なんか、飲んじゃった……」  だって、いけそうって思ってしまった。これも惚れたせいの何かなんだろうか?  ……開き直りとは、恐ろしいものだ。 「つか、真尋さん……台無しです」 「え?」  服を直しながら、守屋はいつもの無表情な顔をする。 「俺の数日間の禁欲が水の泡です」 「……なんで?」 「射精するのってすげー体力使うんです、試合前のボクサーが避けるくらいなんです」  責めるような目で、ずいっと身を乗り出されて後ずさる。腰振らなきゃいいと思ってた……とは、ちょっと言い出しづらい。  でも、待ってほしい。非があるのは俺じゃないはずだ。 「なっ、なら、そう言えばよかっただろ……っ」 「真尋さんがおねだりするから悪いんです」 「理不尽すぎっ……ちょ、はなせっ!」  ぐいぐい押してくる力にまったく勝てず……イヤな予感に冷や汗が流れる。 「なので……お仕置きついでに“最後まで”しましょうか」  ほら、やっぱり――結局いつも理不尽なんだ……  押し倒されて、にんまりたのしげに見おろされて、付き合いはじめてから何度目になるかわからない、諦めを覚える。  でも、ちがうことも今日は覚えたんだからな! と、そんなこと守屋が知るはずもないのに心の中で叫ぶ。

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