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言い方からとくに他意は感じないけど、恥ずかしいだけじゃ済まない事態になるかもと構えてしまう。
「同室なのに、よく飽きずにくっついてられんなぁ」
「く、くっついて……っ」
「ちがいますよ、蓮池さん」
また過敏に反応しかけた俺の言葉を、磨きおわった守屋はやんわり制した。
「辻元先輩、内鍵をかけるクセがあるんですよ。だからいっしょに行動してるだけです」
「あー、そういや閉め出されてるの何度か見かけた気がするな」
守屋は上手くごまかしてくれたけど、このまま蓮池と話しているとボロが出そうだ。うっかりやらかすのはきっと俺だし、ここはさっさと逃げよう……
「も、守屋っ」
「売店行くんですか? いいですよ」
「いや、なんでわかるんだよ……仲良すぎだろ」
つぶやかれた言葉は、流すことにして。平然としている守屋を連れて、俺はそそくさと洗面所をあとにした。
「……守屋、まだ気にしてる?」
「はい?」
問いかけると、守屋は不意をつかれた顔をした。
なんだよ、さっきはぜんぶ言わなくてもわかったくせに。
「俺にまた閉め出されるかもって……」
「ああ……さっき蓮池さんに言ったことですか」
思い当たった守屋は、なんだかわからないけどニヤついた。その口許に、俺はすこしだけ眉を寄せる。
こんな小さいこと気にするなんて女々しすぎる。自分でも情けなくなるけど、蓮池をごまかした言葉がどうしても引っかかる。
「だから……俺といっしょに」
「ずっと拗ねてた理由はそれですね」
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