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「大丈夫だよ……荷物そんなにないし」 「そうかな? お母さん心配してたよ。間に合うのかー? って、手伝おっかー? って」  それは、すごく言いそう。母さんせっかちだからな。  でも荷物なんて着替えくらいしか大きなものはない。洗濯をして使い回しているから本当に量はすくないし。歯ブラシとか、こまごました日用品と受験勉強関連のもの。カートひとつあれば、おさまる程度の荷物だ。  それに“まだ2日”あるんだから、離れる準備なんて……したくないし。 「まあ、大丈夫ならいいけど。じゃあまた来るね!」  俺の心理状態とは反対に、あかるく笑って千尋は大きく手を振った――いま、なんか嫌なこと聞こえたな。 「え、明日も来るのかよ」 「え、明日は来ないよ」  まったくおなじトーンで返されて、なんだか腑に落ちないものを感じる。まあ、連日じゃないならいい……か? 「つぎは先に連絡しろよな。到着時間を連絡するんだぞ」 「わかったよもうっ!……じゃあ、守屋さんとケンカしないようにねっ、またね!」  それは別れ際の、ただのよくある心配だって――わかっているのに。妙にその言葉が引っかかって、 「……しないよ」  うなずいたのか言い返したのか……自分でもよく、わからなかった。  騒がしい夕食の時間も過ぎて、あとは就寝まで自由時間だ。3年から順番に風呂に入るのも、この時間。  守屋は風呂の時間が長いから、俺はだいたい談話室で蓮池とか他の部員たちと遊んで待つことにしている。  でも、なんだかいつにも増して口数がすくなかった守屋が気になって。部屋でひとり、ベッドに倒れることにした。 「あれは……怒ってんの、かな……」  話しかけても短いあいづちが返ってくるだけで反応が薄い。でも答えてはくれるし、怒っているのとは、ちがうような気がする。

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