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――でも。
「……も、りや……」
「なんですか?」
声だけは、本当にいつもと変わらず、やわらかく答えてくれる。だから何度も呼びかけてはいる。だけど結局、たしかめる言葉が出なくて口を噤む。
だって、これ絶対怒ってる……
それはたぶん間違いなさそうだから、痛いことをされている以外の涙まで滲んでくる。
なんでだろう。俺なにか怒らせるようなことしたのかな、きいたら教えてくれるかな……
きけないくせに疑問は消えないし、繰り返し浮かんでくる。それにまたじわじわ涙がたまっていく。
「あ、んっ……ゆ、び……ぬるぬる、する……っ」
唾液を塗りつけられて擦られると、刺激が何倍にも膨れる。かたい肌の摩擦がなくなって、快感だけを擦られているみたいに。
「真尋さんが舐めてたからでしょ?」
「や、だっ……気持ち、わる――ひ、いっ!」
こんなの気持ちいいに決まってるのに。恥ずかしいから出た言葉なのに。
「……気持ち“イイ”ですよね、真尋さん?」
ひねるように、そこを摘まんで。わざとらしいくらいのやさしい声で。
耳許の守屋は意地悪く、俺の言葉を拾う。意地悪く、じゃない。本当に“悪く”拾って責められている。
「っ、いい……きもち、いい……」
そうか。俺、責められているんだ。――でも理由が、全然わからない。
戸惑う頭で、必死に理由を、“なぜ”を探ろうとするのに、
「妹さん、来てくれてよかったですね」
「んッ……はっ……ん、ぅっ」
またくちびるに差し込まれる指が、胸から腹をなで下りていくてのひらが、淡々と俺を追いたてて邪魔をする。
「……真尋さんとそっくりなんですね」
「ぅあっ、んっ!……く、ぅンッ」
下着の中に潜り込んだ手に、熱くかたくなっていたそこを扱かれる。滲んでた先走りでぬるつく指は、俺の弱い部分を知っているから、簡単に射精感を煽られる。
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