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「……え?」 「前に、言ったじゃないですか……あなたから見えるなら、俺からも見えますよって」  覚えてないんですか? と言いたげな。言わせないでください、と言いたげな拗ねたくちびるから、 「あんな毎日見られたら、気になるに決まってるでしょ」 「えっ?」  なにかを観念した、ためいきが吐き出される。据わった瞳が――まっすぐな瞳が俺に向く。  それは、見たこともないくらいに真剣で。男前な、凛とした顔が、さらにさらに整って――もう、なんて引力。さわりたいです、すごく……っ! 「真尋さんは俺に一目惚れですか?」 「えっ、あ、うん」  すこし早口な問いかけにつられて俺は即答した。若干、求めるように背中に回そうとしていた手を、ぐっと握る。遅れてまばたきも何回かする。  ――しまった。さらっと暴露させられた……  恥ずかしすぎて、耳まで熱い。  守屋は妙な間をつくるから、居心地がどんどん悪くなる。 「あの……え、っと」  気まずさに、やんわりごまかそうと考えたいいわけはでも、 「じゃあいっしょですね」 「へ、えっ!?」  さらっとカミングアウトされた守屋の頷きに行き場を失って、うわずった声に変換された。

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