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耳裏に吸いつかれたり、耳の上とか耳たぶとかをくちびるで食べられたりしているあいだに、シャツの裾から這い上がってきたてのひらが胸をなでてくる。
守屋のてのひらは、いつもあったかいから気持ちいい……けど。なんかやんわり揉まれてるというか。こねないでほしいんだけど……そんなてのひらぜんぶでこねないでほしい……
「ひ、ぅっ……ん、ふ」
悲鳴みたいな声が出そうになるのを手で塞ぐ。
敏感な先の部分を指で尖らせるようにつままれると、痒みに似た刺激が広がって、残る痺れは甘くなる。もっと触ってほしいみたいに、硬くなっていくのが自分でもわかる。
「ん……あっ……っ、ん……ぅ」
手の甲を噛んでみても、声は隙間からこぼれ出る。背中をよじると、守屋は体格差で押さえ込んでくる。
おまけに、俺がビクつくとロッカーがガタガタする音も連動するし、この状況じゃ何をしても何をされても隠せないから、恥ずかしさは倍増しかしない。
「この手……邪魔なんですけど」
塞いでる手にもくちびるを寄せながら、守屋はたのしそうに目許を細める。
「どうして塞ぐんですか?」
答えがわかっているのに、あえて聞いてくるこの意地悪な感じ。これもひさしぶりな気がして、安心感が込み上げてくる――けど、でもやっぱり慣れない。
「だ、って……あ、頭のうしろ……ゾクゾクする、から……っ」
「……するから?」
頬から首すじへとくちびるを移しながら、守屋は吐息で笑う。肌をすべっていく体温にくすぐられて、触れられているところがぞくぞく痺れていく。余計にふるえるし、ロッカーが鳴るし、の恥ずかしコンボ。
立ち塞がれて抱きすくめられて。逃げられない体の中から、どうしようもない涙と熱がじんわり膨らんで育っていく。
「する、から……へ、変な声……でるっ」
「……気持ちいいからでしょ?」
「あっ、ちょっ……んっ」
口許を塞いでいた手を押しのけて、また深く浅くキスをくりかえされる。悲鳴は出なくなったけど、鼻にかかった甘い唸りに変わるだけ。ちゅっ、とか。くちゅっ、とか。舌と唾液のからまる音ばっかり気になるし……もうほんとうに何をされても――
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