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そんな、わかりきっている事実――
「お……俺が思い出しちゃうから、やめて……」
――嫌っていうほど、もう刻み込まれている。
「……じゃあ、もっと増やしますね」
「いたぁッ、なっ……なんでっ、やだっ痛いッ!」
気まずくなった夜ほどじゃない噛みつきと吸いつきをたっぷり倍の数、その身に受けながら。がっちり腰骨をつかまれて、ロッカーが揺れるのも構わず、奥まで深い突き入れとねっとり浅い引き抜きを思う存分くりかえされて、
「ンっ、あっ……――も、でちゃ、っん、あ……っ」
「真尋さん……イクの?」
「ん、イクッ……いっ……く、っ」
やっとその瞬間を――
「……あ、なん、っで……やめ、んのっ」
――……迎え、かけた。
あと、本当に、2回くらい擦ってくれたらイケたのに。それまで好き勝手に動いていた守屋の腰がウソみたいにとまる。あふれるはずだった快感が行き場を探して、腰も粘膜もビクビク痙攣させるけど。
そんないまさらな恥ずかしさはどうでもいい。涙目なのもどうでもいいから、肩口から守屋をにらみ上げる。
「立ってるの、しんどいでしょ?」
「そ、れはっ……そうだけど」
「だから、こっち向いてください」
ふりかえって目にする顔は、呆れるほど意地悪く見つめていて。そのズルそうに笑むくちびるが頬にやさしく寄せられるし、気遣うような言葉もくれる。わざとらしいとまでは言わないけど、ごまかされている感じがハンパない。
「俺も、真尋さんのイキ顔見れるほうがいいです」
「んぁっ……へ、ヘンタイっ!」
触れるだけのキスの合間に――これはゼッタイそうなんだけど――わざとゆっくり焦らすように抜かれて、なのにそんなことも全部気持ちがよくて。
悔しいから言い返すのに、
「だって、俺だけの特権ですから」
なんて。余裕の笑みでささやかれる言葉に丸め込まれる俺は、もう末期だ。死因は『惚れた弱み』と書かれるにちがいない……きっと。
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