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「……ん、ぅっ……あ、やっぱ……は、入らな……っ」 あてがってみたけど、やっぱりめり込むこわさは拭えなくて。逃げちゃう腰とそれでもがんばってかける体重で、太腿が震えるし膝も痛いしベンチが鳴るしの恥ずかしコンボ。 「入るから……息、ゆっくり吐いて……力抜いてください」  そんな軋む音といっしょに、やさしい声が鼓膜に響く。なだめるてのひらが髪をなでてくれるし、背中もさする。 「あっ……待って、も……あっ、そこで、とまっ、て……っ」  でも、急かすてのひらが腰骨をつかむし、焦れる腰に突き上げられる。  ――すごい、“なか”が動いてるのわかる……奥まで届くように、もっとひらいてくれるの待ってるみたいに。 「ダメ……ここまで全部、入るでしょ?」 「あっ……は、入った……奥までっ……ぜんぶ、入って……る」 「……よくできました」  ちょうどいい位置にきた俺の額にくちびるを寄せて、守屋は甘く笑む。そのままこつりと額も重ねて、瞳をのぞき込んでくる。 「真尋さん、してほしいこと……言ってください」  いままで言われたどの言葉よりやさしく響く声に顔が熱くなる……けど。また何か意地の悪い要求のはじまりなのかも、とちょっと構えた。 「して、ほしいことって……」 「埋め合わせの途中、だったでしょ?」  やわらかい微苦笑に、あの夜の切ない顔と……とけ込んできた熱量を思いだす。想ってくれた深度と温度が、あの時とおなじように胸も喉も苦しくさせる。  こんなに、どうしようもなく苦しいのは――  迫り上がってくるこの気持ちを留めようとするからだ。こらえる必要も我慢も、本当はないはずなのに。“あの時”みたいに、はじめてした時みたいに。あふれるまま、こぼせばいいのに。

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