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だって素直でも素直じゃなくても、守屋は俺を――
「……呼んで」
その意地の悪いくちびるで。やさしい声で。
「俺のこと……呼んで……キスして」
予想していなかった要求だったのか、守屋はちょっと意外そうに見返してきたけど。
「……真尋さん」
淡く色づくような吐息で俺を呼んでくれる。はじめて呼ばれた時も、こんなふうに涙が出た。
「……んっ」
ゆっくり、ふわりとくちびるが触れてきて。離れる微熱が消えないうちに、また塞がれて。押し出されるためいきがお互いのくちびるを割らせるから、重なりは深くなる。
軽く閉じたまぶたの裏にはたのしそうな口許の残像――キスが好きな理由を、守屋はきっと知らない。おなじようにまぶたを閉じる自分がどれだけ幼い顔をしているかなんて、きっと知らない。
「……これだけでいいんですか?」
「ん……まだある」
肩に置いていた手を、ゆるく守屋の首に回した。甘い胸の底とはまたちがう、腹の奥というか……腰を疼かせている熱が、待てない体を煽ってくる。
「たぶん、俺がしてほしいことされるより……誓がしたいこと……されるほうが、気持ち、いい……から」
恥ずかしすぎて、かすれた声にしかならないけど。顔にも耳にも頭にも、破裂しそうなくらい血が集まってきているけど。
「……誓の、好きに……して」
目の前がじわじわ潤って仕方ないけど……とにかく、そう伝えてみた。
けど――なんか、あれ……なにその目、ちょっとこわい。
「いいんですか、そんなこと言って」
「……え、あっ……な、んッ!」
迫るように身を乗り出されて、落ちかけた腰をたわむシャツごと乱暴な手が引き寄せる。
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