136 / 171
4_72
「……相変わらず、ズルいですね」
短く息を吐いて、ひとりごとみたいに守屋は言う。つかんでいた両手の力がすこし緩くなる。
「好きにしてって言ったくせに、全然俺のペースにさせてくれないし」
「ん……」
くちびるをやわらかく合わせて、擦り寄せた舌を甘くからめる。こぼれる唾液が肌をつたうけど……きもちいい。
「焦らすし、煽るし……締めてくるし」
「ん、ンっ……んぁ、は……これ、きもちい……んっ」
抱え直して、丸みを支えた手でゆっくりゆっくり上下に揺らされる。弱いところも好きなところも、あやすように擦られる。突かれる奥の快感は苦しいのに、甘ったるい。
「俺、はじめてですよ……こんなの」
「や……あ、ンっ……ゆるく、吸わない、で……っ」
揺すられるのが気持ちよすぎて、背中にも腰にも力が入らない。前に倒れていく胸を守屋は丁寧に舐めるし、くちびるで挟んで吸い上げるし。俺がされて気持ちいいことしかしないから体がどんどん甘くなる。
「こどもみたいなヤキモチなんかやいたのも、八つ当たりして悪かったなと思ったのも……」
「んっ……八つ当たり、だったの?……あれ」
「……なんだと思ってたんですか」
また“お仕置き”なのかと思ってた――とは、いまもう言えないけど。責められていると思ったのは、俺が“悪いこと”をしたからで、だからあれは――甘噛みなんて守屋は言っていたけど――“罰”なんだと……思っていた。
だって、ヤキモチなんて可愛いものをやいてくれると思っていなかったし……だから「それじゃ謝れない」って言っていたのか。守屋はそんなつもりなかったのに、俺が我慢したから余計にこじれた……んだな。
「ワケのわかんねぇ嫉妬されたのも、それ全部に耐えて……やさしくしたのも、はじめてです」
そこまで言うと、守屋は目許の赤みを濃くした。隠れるように、俺の肩口に顔を伏せる。
ともだちにシェアしよう!