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 指が動くたびにあふれてくる白いアレは、まだ人肌よりあったかいし、蜜みたいなものが伝うそれでとろとろ肌をくすぐるから―― 「ん……見たら……だ、め……っ」 「……真尋さん、これは刺激が強すぎます」  ――なんかあからさまに卑猥な感じになる…… 「ね……もり、や……なんで、さっき……」 「……美術室に行こうと思ったんですよ」  じいっと、流れる液体と俺のヒクつくそこら辺を見ていた視線が、やっとこっちを向いた。  というか、全部言わなくてもわかるとか。やっぱすごいな守屋。ちょっとうれしくなるじゃんか…… 「なんで……美術室なんか、に?」 「真尋さんと話をしようと思ったからに決まってるでしょ」  なにをいまさらとつづきそうな言葉は、拗ねた感じだったけど。とがりそうな口許がきゅっと結ばれる仕草に、心の底から安心した。  守屋も俺も、おなじ感情ただひとつでつながっているんだと、再確認する。その感情が、こじれた原因でもあるけど。 好きすぎて見失いそうになるなんて『恋は盲目』ってホントなんだな。 「守屋……」 「真尋さん、すごい締めてきてますけど……」  もう全部かきだして、ティッシュで拭いおわってもいるのに。まだ出ていかない指が、奥に残る余韻を突いてくる。  もう1回くらいできないかな……なんて、欲求不満丸出しの俺の頬に軽くくちびるを落として、守屋はあっさり指を引き抜いた。 「……つづきは、夜まで我慢してください」  そう言った守屋は、いつもの意地の悪い顔じゃなくて。やわらかくまつげを伏せた、俺の好きな顔で笑うから、 「俺……はじめて、おまえのこと嫌いって思った、いま……っ」  膨れ上がってきた涙に抵抗するのをやめた。  今日に至るまで、ことあるごとにあんなに泣いてきたのに。涙になる水分以外も流れ出てるんじゃないのかと、熱を持ちすぎて頭痛すらしそうな頭の片隅で思うけど。こんな、意地が悪いにもほどがあること言われたら――泣くことしかできなくなる。

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