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ちょうどいいって、なにがだよ。と、いうか――嫌いになるって言ったことに対するフォローはないのかっ!
部室の鍵を職員室に返しに行っているあいだも顧問とコーチに挨拶しているあいだも、俺はモヤモヤしながら守屋をにらんでいた。
たまに視線を合わせてくる守屋はニヤニヤしながら「拗ねてます?」なんて、わざわざイラつきを逆撫でしてくるし。ちょいちょいスマホをいじって誰かとやりとりしているのも気になるし……
つかず離れすぎずの微妙な距離で、寮までの道を帰ってきた。
――ら、なぜか寮の玄関には葛西くんが待っていて。
「おつれさまでーす! 遅かったスね!」
ご主人様の帰りを待っていたワンコそのままに、見えない尻尾をふりながら。にへらっと笑ったかと思うと、
「もうみんな談話室に集まってるスよ! 峰さんが待てなくて蓮池さんがとめてますから、はやく来てくださいっ」
――とか、すこしも意味のわからないことを言ってくる。
この感じ、守屋がやりとりしていた相手はたぶん葛西くんだ。なんだよ、おまえも
ワケ知りなのかっ!
なんて思いながら談話室に向かう背中を細目でにらむ。隣を歩く守屋は、俺にまた含み笑いをするから本当にムカつく。詰め寄ってやろうかと口をひらきかけたけど、やめる。でもその行動にさえ守屋は笑うから、もう無心で歩くことにした。
――で、談話室に着いたんだけど。
入った瞬間、いや入口に立った瞬間に俺はビクッと動きをとめた。だって、決して広くない談話室いっぱいに、図体デカいやつらが並んでいる。集合していた寮の水泳部全員の視線を一斉にあびて、どう処理したらいいかわからないコミュ障の俺はフリーズした。
「辻元、遅すぎ。待ちくたびれたよー」
「くたびれたのは峰じゃなくてこいつらだろ……」
その中心から声をあげたのは峰と蓮池で。その、峰の近くにいる1年と2年は顔面蒼白で汗だくだった。……待てない峰は彼らに何を強いたんだろうか。きっと壮絶だったんだろうな、とは思うけど。
「まあ、いーよ。主役が来たんだしはじめよっかー」
あいかわらず目許に色気を含ませて、峰が笑う。それを合図に、集まっている全員が紙コップを手に取った。
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