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 その談話室の光景に、いつかの記憶が重なってくる。  テーブルにはちょっとした飲み物とお菓子の山々があって、みんながなぜか笑顔で俺を見ていて……恐ろしいほどウェルカムだった……あの、夏休み初日の歓迎会と酷似して、いて。  ――おいちょっと待てまさか、と過る。 「ではー辻元の合宿延長を祝してーカンパーイ!」 「……っはあ!?」  峰の音頭に合わせて、キレイにそろった「カンパーイ!」の声が響いた。言いおわるやいなやの歓声をあげてあの日と全くおなじに、飲み物の酌をつがせろと部員たちにわらわら群がられる、潰される。  俺の悲鳴みたいな声なんか誰の耳にも届いてない。  ちょっとなにこれ。聞いてない。聞いてないぞッ! ワケ知りなの全員じゃ……――いや知らないの俺だけだろ!  悪気ない笑顔で揉みくちゃにされる恐怖の隙間から、 「……ちょっ、守屋!」  どーいうことだこれ! と振り返った先で、守屋は肩をふるわせるくらい笑ってやがって本当に腹立つ!   口許に手をあてたところでまるっきり隠せていないから、余計にムカつく! 「おー、やってるねぇー」  今度こそ詰め寄ってやろうと、もう俺のことなんて関係なしに騒ぎはじめた人波をかき分けていたら、入口で悠長にもたれている守屋の後ろから見慣れた顔がのぞいた。

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