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でも、そんなことになっちゃってるのは守屋も同じみたいで。
「真尋さん……苦しかったら言ってください」
抱えられてる左の太腿に噛みつくようなキスされた。その脚を反対側に足持ってかれて、つながったまま俯せにされる。
「ひ、ン……なか、こす、ちゃっ、ん……っ」
グズグズになってる奥の快感をかたい先で掻き回されるから。目の前がゆがむくらいの、ありえない気持ちよさ。逃がし損ねた息は腰の連打にガクガク揺らされる首のせいで、余計に喉をつまらせる。
「んっあっ、待って、ンッ……おく、ダメ……だ、めっ」
「っ……真尋さん、そんな締めないで……動かせない、から」
腰だけ、尻だけ突き出すみたいにあげられて。おまけに片手をうしろに引っ張られるし、脚も守屋の膝で、大きくひらいた状態に固定されて。ただでさえ奥の奥まで届いちゃうこの体勢で――腰骨があたって痛いくらい、押しつける深い連打。なかでぎゅうぎゅう吸いついてる襞を剥がすがたのしいみたいに、ゆるゆる……ゆっくり腰を引かれて、でもまた最速で捩じ込まれて。目の前が眩んで回る快感が、くりかえし身体中に甘く響いてどうしようもない。
「んっぁんっ……き、もち……ンあっ、なか、い、い……あっ」
背中に密着してくる守屋は、
「すっごいエロい声出てるね……てか、ずっとイッてるでしょ?」
耳許で俺より何倍もエロい声を出す。
「ン、ぅ……イッて……る、ずっと、でちゃっ、ぅ……んッ」
「ずっとなか痙攣してるし……うねってるし……ねぇ、真尋さん……なんでこんなエロくて気持ちイイ身体してんの?」
耳を塞ぎたくなるくらい、あからさまにエロいことをくすぐるようにささやいてくるし、
「っ……そんな、っ言わな……ン、んっん!……あっ」
硬くなりすぎてジンジンする胸も、シーツにダラダラ垂らしてる下も、気紛れなのに執拗にいじってくる。
「……イクときの締めつけスゲーいい、俺もイキそ……」
「うぁ、あっ……待って、そこで、ださないでっ……またイクっ、イッちゃぅ!」
あげくに“また”なかに出されちゃって。そのたびに、先に出したのが泡立つし、あふれてたれてきてる。粘度の高いその音も、とろとろ肌をつたう痒みも、感度は全部『気持ちイイ』って拾う。
「ひ、ぅン……あ、ん……もぉムリ……だから、イカせなぃ、で……」
こんなの、つづけられたら俺もっと、本当におかしくなる――
「も、おっ……あ、ぅ……なかっ……こわ、れる……っ」
シーツに擦りつけて耐えていた顔は、涙とよだれでぐずぐずだし、もう力も入らない。腰のたたない情けない格好してるな……と、自覚はかろうじてあるけど。ビクビク震える肩の向こうを、守屋を必死に振り返る。
「……頼むから、そんな顔しないでください」
押し殺すような吐息と言葉で、困ったように笑うクセに。
「俺もっと……ヒドいこと、してあげたくなるから」
やさしいフリして意地悪なことを言う守屋は、熱の滲む細めた瞳で見下ろして、塞ぐくちびるで噛みつきながら……俺のこと全部、その蜜みたいに甘い熱でまだとかしてくる。
けどもう俺、なにも出ない……
「ん、や、ぁんっ……もう、イケなっ、あっあ!」
「……本当に? また、なかきゅうってしてるよ?」
「ぅくッ……ぁう、むりら、っへ……んッ、ぇう」
覆うように上から押し潰されて、耳の形をくちびるで食まれて。あえぐ吐息を割ってくる指先に、弱い……舌の真ん中を押されて擦られて。
「っ……ごめんね、真尋さん……出すよ」
「ひ、ッんン……んっ、ふぅ、ンんッ!」
もう……何度めなのかわかんない、奥にかけられての空イキに近い、絶頂を迎えさせられてるのに。
「ほんと……身体はこんな素直なのに……なんでこっちは嘘つきなんですか?」
「ん、ぇ……うそ、じゃな……のにっ」
引き抜かれる、たっぷり濡れた唾液に糸ひく骨張る指先と、
「でも、俺はそういうところが……たまらないですけどね」
甘やかすように落ちてくる言葉と、頬に触れるくちびるに。また、疼いてきちゃう――
「ん、ぇ……もぉ、やだ……」
のが、とてつもなく――こわくて。
「な、んで……もうでないの、にっ」
頭の中の思考は、すこしずつはっきりしてきてる。でも、身体は奥から熱くて、上りつめたくて震えてる。言うこと聞いてくれる気が、すこしもしない。
「でて、ないのに……またイキたくなっちゃう……っ、お、れの身体じゃない、っ……こんなのっ……やだ」
泣いてるからなのか苛んでくる熱のせいなのか、縋りつくシーツは冷たくて。それでもまだ興奮してる自分を余計に自覚させられる。1週間分以上、してもらってるはずなのに。なんで俺は、こんなに我儘で欲しがりなんだろう。
「せ、誓っ……ごめ……俺、おかしく、て……ごめん……っ」
不安とさみしさの相乗効果で『してほしい』気持ちを増幅してたとしても、ためらわれてもいたのに無理に迫って、付き合わせて。それでも満足しないなんて。守屋は病み上がってすらいないのに――こんな自分、あさましすぎる。
「……真尋さん、大丈夫ですよ」
かすかに笑みを含んだ柔らかい声が耳許で響いた。
「我慢できてないのは……俺もいっしょです」
そう言って守屋は、汗と涙に濡れる髪を梳いた指で、やさしく目尻を拭ってくれる。
「気持ちよすぎて、こわくて泣いちゃうとか……すごく、かわいいし」
全部言わなくても――あいかわらず――俺のつたえたいことも、思っていることもわかっている守屋は、
「嫌いになったり、しませんよ」
俺が欲しい言葉を……聞きたい言葉をちゃんとくれる。
「俺だって真尋さんなら……なんでもいいです」
いつかの俺と同じ台詞で、ぎゅっと抱き締めてくれて。それだけでもう十分というか……もったいない、くらいだから。
「っ、誓……だいすき……っ」
やっと、恋しかった――欲しかった熱が、正しく身体を満たしてくれる。抱き返して押しつけた頬も、しがみついた背中も重なる胸も。くっついているところ全部が、温度を感じなくなる、けど。でもそれはきっといま、俺と守屋が同体温になったから……だと思う。
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