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アイオープナー ⑥

 どのくらいの時間が経っただろう。  それから暫くは他愛もない会話をしつつ楽しんでいたが、不意に静寂が二人を包み込んだ。 「ねぇ、部長そろそろ戻りませんか? ……早く、誰にも邪魔されない所に行きたい……」  甘さの滴る手で太腿の内側を撫でながら、耳に息を吹き込むようにして囁かれ理人は思わず口に咥えていた煙草を落としそうになり慌てて掴み直した。 「……言うじゃねぇか……」 「ふふ、部長だって本当は期待してるんでしょう?」 「チッ……まぁいい。こんな所で手ぇ出されたら堪んねぇからな……」  煙草を灰皿に押し付け、コートを着込みマフラーを手にすると、会計を済ませて店を出る。  流石に11月末の夜にもなれば空気が冷えていて、肌を突き刺すような冷気が身を包む。 「さみぃ……」 「ですね。早く行きましょうか」  足早にバーから遠ざかると、先日二人で行ったホテルへと足を運んだ。適当にパネルを押し、エレベーターに乗り込んだ瞬間  瀬名は理人の腕を引いてその身体を抱きしめた。突然の出来事に抵抗する間も無く、そのまま壁に押し付けられると、顎を指で掬われ至近距離で見つめ合う形になる。そして――……。  気が付いた時には、もう既に瀬名の唇が自分のそれに重なっていた。  瀬名は驚きに目を見開く理人を気にも留めず、その口腔内を犯すように自らのそれを割り込ませ、舌を差し入れてきた。 「ん……っ、ちょ、馬鹿……まだエレベーターの中だぞっ!?」 「大丈夫、僕らしかいません」 「そう言う問題じゃな……ん、む……っ」  制止の声を上げようとすると、再度口を塞がれ今度は絡めとるようにして舌を吸われる。まるで貪るような激しいキスに翻弄され、腰に甘い疼きが生まれる。 「ふ、ぁ……、ン、ちゅ……ぅ、くそ、はぁ……っふざけんな、いきなり、こんなキス……」 「ん、ふふ……。可愛い……」  ようやく解放され睨み付けながら息を荒げる理人に瀬名はうっとりとした表情で囁きかけると、もう一度軽く触れるだけの口付けを施した。

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