「それに、なんだその隣にいる熊みたいな男は！」 「えぇ、クマって俺？　酷くない？　初めて言われたんだが」 「……図体だけはデカいからな……透は」 　思わず呟いた言葉に、透は「ちょっと傷つくな」と苦笑する。 「そんな男のどこがいいんだっ！　アレか！？　ナニがデカいのか！？」 「はぁ……コイツの頭ん中どうなってる？」 「さぁ……。どうやら、彼の中では俺達付き合ってるみたいな事になってるみたいだけど……」 「きめぇ……っ」 　理人はゾワッと背筋を震わせると、不快感を露わにした。 「おい。あんまきしょい事言ってるんじゃねぇぞコラ。……てめぇのその低俗な脳みそカチ割ってやろうか？　くそ野郎」 　こんな茶番に付き合わされるのは御免だと、声に怒気が混じる。鋭く睨み付けてやると間宮はひぃいっと情けない声を上げた。 「ひっ！！ お、おのれっ！！ この場では許してやるが、覚えていろよっ！！ 必ず、この借りは返してやるからなっ！！！」 　安っぽい捨て台詞を吐きながら、脱兎のごとく逃げ出した間宮の背中を睨み付け、理人は小さく舌打ちをする。 「全く、何なんだアイツは……」 「いやぁ、モテる男は大変だな」 「……うぜぇ」 　透のからかい混じりの言葉に理人は不快そうに表情を歪めた。 　いい年齢してTPOも考えられないような男は大嫌いだ。 　不快感をあらわにしていると、不意にスラックスのポケットでスマホが震えた。一度は無視したが、再度震えだしたので、理人は透に断って電話に出た。　瀬名からだった。 　式は無事に終わり、もうすぐ披露宴が始まることを告げると、終わった頃に合流したいとの申し出があり、躊躇いながらも終わったら連絡を入れるとだけ言って電話を切った。 「今の電話の相手は、この間の番犬君かな？　随分仲がいいんだな」 　透に冷やかされて、理人は思わず顔をしかめた。 「ハハッ、そう怖い顔するなよ。あぁ、ほら……入場の時間だ。席に着かなきゃ」 「あぁ」 　促されるまま、会場へと入っていき、自分の席へと腰を下ろした。 　先ほど、意味の分からないイチャモンを付けて来た間宮という男は、新婦側の席に着いている。 　あの男が新婦とどういう関係なのかは知らないが、もし仮に親戚とかならばきっと大変だろう。 　――まぁ、自分には関係のない事だ。　そんな事よりも、これが終わったら瀬名と合流して、それから……。 　新郎新婦の入場を拍手で迎え、目で追いながらも、理人の頭の中はこの後会う予定の瀬名の事でいっぱいだった。