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act.4 スティンガー~危険な香り~
あの日から瀬名は理人の部屋が気に入ったらしく頻繁に泊まりに来るようになった。週末になると決まって家にやって来て、朝まで抱かれる日々が続いている。
意外にも瀬名の料理は美味しくそれを口実に泊まっていけと言っているのは秘密だ。瀬名と一緒に居るのは楽しいし、落ち着く……。最近そんな風に思い始めている自分がいる事に驚きを隠せない。
そんな事、口が裂けても言えないけれど……。
ちゃぽん、とバスタブの中で湯が跳ねる。本来なら一人でゆったりと入れる浴槽に大の大人が2人で入るのは流石に狭い。
だが、そんなことはお構いなしに瀬名は理人を後ろから抱きかかえるようにして密着してきた。
濡れた髪や肩に当たる唇がくすぐったくて身を捩るが、瀬名は気にせず理人のうなじに顔を埋めてくる。
「……おい、いい加減離れろ」
「嫌です」
「狭ぇんだよ」
「知ってます」
「お前なぁ……っ」
文句を言おうと振り返ろうとした瞬間、首筋に噛みつかれてビクッと身体が震えた。
「んっ……!」
「理人さんは僕のモノだって、マーキングしてるんですよ。ほら、こことか……」
「ん、ぅっ……!」
ちゅうっと吸い付かれ、理人は変な声が出そうになるのを唇を噛んで必死に堪える。瀬名は満足げに笑うと、今度は胸に手を這わせてきた。
「ここも……」
「あぁっ……!」
乳首を摘ままれてビクンッと身体が跳ね上がる。
「こんな風に弄られて喜んで……。やっぱり理人さん敏感ですね。可愛い」
「やっ……あぁっ……! はぁっ……」
胸を揉まれながら指先で突起を刺激されると、自然と息が上がってしまう。理人は悔しそうに唇を噛むと、瀬名の腕を掴んで引っ張った。
「ばか瀬名、んなとこでサカるんじぇねぇよ……」
「……、ねぇ前から気になってたんですが……。僕の事そろそろ名前で読んでくださいよ」
「な、名前……?」
予想外の要求に理人は戸惑う。今まで「瀬名」と呼んでいたのをいきなり変えるというのは意外に難しい。
「ね、呼んでみて下さい」
「……調子に乗るなっ」
「良いじゃないですか、減るもんじゃないし。ね?」
「うー……」
瀬名は甘えた声で言いながら、胸を撫で回してくる。乳首をギュッと強く摘ままれて、その感触にゾクリと背筋が粟立った。
「あっ……! ばか……やめ……」
「ねぇ、早く……」
「……っ……」
耳元に熱い息を吹きかけられ、頭がボーっとしていく。瀬名の低くて甘い声が脳内を犯していくようだ。
「―――」
「聞こえないです」
「チッ………っ、ま、また今度気が向いたら呼んでやるっ! それと、明日は萩原の結婚式に出るからスるのは無しだからなっ!!!」
ばしゃんと勢いよく水面を揺らして立ち上がったかと思ったら、理人は大慌てで風呂から出て行ってしまった。
「ぇえ~……なんですか、今の……」
浴室の中から、瀬名の呆れたような、不満そうな声が響いたかと思えば、今度は可笑しそうにクックックと忍び笑いが聞こえてくる。
「ほんと、素直じゃ無いなぁ~……」
(……全部、丸聞こえだっつーの!!)
理人は内心でツッコミを入れると、顔から火が出る思いで寝室へと逃げ込んだ。
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