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スティンガー ⑩

「――へぇ、ってことはつまり、その間宮って奴が勝手に勘違いした結果が、アレだったってわけ、ですか……」 「……あぁ」  行為後、シャワーを浴びてさっぱりした後、煙草をふかしながら今日あった出来事を話し終えた理人は、ふぅと煙を吐いた。  ようやく、冷静に話を聞く気になった瀬名は、腕を組み考え込むように眉を寄せた。 「全く、はた迷惑な奴ですね」 「本当に……お陰でえらいことになって、えらい目にあったぜ」  ぎろりと隣でシレっと言い放った相手を睨み付けてやると、瀬名は涼しい顔をして肩をすくめる。 「ハハッ、睨まないで下さいよ。怖いなぁ」 「……誰のせいだと思ってやがる」 「僕のせい、ですかね? あー、でもすっごく気持ちよかったんでしょう? ただでさえ敏感な理人さんがイキっぱだったし。一突きするたびに身体がビクビクして何回もイっちゃって可愛かったなぁ」 「ばっ……! クソッ……!」  瀬名の言葉に、あの時の痴態を思い出してしまい羞恥に顔を染める。確かにイった回数は数え切れない程だが、それを人に言われるのは死ぬほど恥ずかしい。  慌てて煙草を灰皿に押し付けて消すと、布団に潜り込んで瀬名に背を向けた。  瀬名はそんな理人を見て楽しげに笑うと、背後から覆い被さるように抱き締める。 「……理人さん、もしかして拗ねてるんですか?」 「んな訳ねぇだろ。離せよ」 「嫌です。理人さん、可愛い……」  瀬名はくすくすと笑って、理人の頭を撫でた。理人は小さく舌打ちすると、不機嫌そうな声でぼそりと呟く。 「は、離せ馬鹿! 俺はもう寝るっ」 「え? もう寝ちゃうんですか? 酷いなぁ。もう少しお話しましょうよ」 「うるさい、邪魔すんな! 寝るったら寝るんだよ」 「……邪魔? ……酷いなぁ」  瀬名はそう言うと、理人の乳首を服の上から摘まんで弄り始めた。 「んっ……ちょっ、やめ……っ」 「おや? もう固くなってますけど? 寝るんじゃなかったんですか?」 「お、お前が……んっ、変なことするから……っ」 「変なことって? 」  瀬名は意地の悪い笑みを浮かべながら、理人の胸に手を這わせ、首筋に軽く歯を立てた。 「んんっ……! やめ……っ」 「ほら、やっぱり感じるんでしょ? やめていいんですか?」 「……っく……」  指先でカリカリと先端を引っ掻かれ、息を吹き込みながら熱い舌先が耳穴を犯すと、理性とは裏腹に身体は快楽を求めてしまう。 「ふふっ、身体は正直ですね……」  瀬名は理人を抱き寄せると、体の向きを反転させた。胸元に唇を寄せ、吸い付き赤い痕を残していく。そしてそのまま首筋から鎖骨へと徐々に唇を下げていき、やがてぷくりと立ち上がった突起を口に含んだ。 「あっ……ぁあっ……」  生暖かい口内でねっとりと舐められ、甘噛みされると、甘い痺れが全身に広がっていく。瀬名はもう片方の乳首にも手を伸ばし、同じように愛撫を施していった。 「やっ……あぁっ……っ、くそ……っお前……、も、しつ、けぇよ!馬鹿っ」  理人は瀬名をグイッと両手で突っ撥ね、生理的に潤んだ瞳のまま相手を睨み付けた。 「あのなぁ、俺は怒ってるんだぞ! 人の話は聞きゃしねぇし……毎回毎回こうやって流れを無理やり持って行こうとしやがって」 「……」 「たく、だからしばらく、……今後2週間はこう言うことは一切禁止だ!」 「……はい?」  理人はそう言うと、瀬名の身体を押し返し、背中を向ける。瀬名はポカンとした表情で理人を見つめていた。 「……2週間も、理人さん我慢できるんですか?」 「うるせぇな! ダメつったら駄目だ。 守れなかったら、お前との関係も終わりだ 」 「……」  瀬名は不服そうな顔をして理人を見ていたが、本気で怒っているのだと察すると、盛大な溜息を吐いて渋々了承した。 「まぁ、今回は僕が勘違いしちゃったってのもあるので、仕方がないですね。わかりました。あぁ、でも……キスだけはいいでしょう?」 「は? そんなの、だ――……っ」  駄目だと言おうとして、捨てられた子犬のような目で見つめられ、言葉に詰まる。 (うっ……)  そんな目で見るな。俺がその目に弱いことを知っててわざとやってるのかコイツは。 「あーもう、わかったよ! その代わり、キスだけだからな!」 「はい!」  瀬名は満面の笑顔で答えると、理人の頬にちゅっと軽いキスを堕とした。 (たく、嬉しそうな顔しやがって……ほんっと調子狂う……)  理人は心の中で悪態をつくと、瀬名の腕の中に身体を委ねた。

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