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ライラ ⑨

「……だめ、ですか?」  子犬のような声色に逆らえる訳なんて無かった。それに、顔が見たいと思うのは理人だって同じだ。そんな事絶対に、口には出さないけれど。 「チッ、ちょっと……待ってろっ」  そう言って理人は部屋の電気をつけると、PCを立ち上げてデスクトップにあるアプリを立ち上げた。そして、瀬名の部屋とカメラを繋ぎ、マイクをオンにする。すると、瀬名の顔が画面に映し出された。  風呂上りなのか、髪が濡れていてそれを掻き上げる姿がエロい。 「うわ……理人さん、エロ……っ」 「あ? 目ぇ腐ってんのか?」 「だって、半裸って……乳首丸見えだし……相変わらずいい腹筋……」 「……っ」  せめてシャツ位着ておけばよかったかと後悔するも時すでに遅し。画面の向こうにいる瀬名の目が胸元に集中しているのがわかって頬が熱くなった。  ワイヤレスのヘッドフォンから興奮した様子の瀬名の息遣いが聞こえて来て、理人もまた落ち着かない気分になる。 「ねぇ、理人さん……勃っちゃった」 「あ?」  唐突に投げかけられた言葉に思わず間抜けな声で返してしまう。だがすぐにそう言うことだと理解して、つい、視線を画面越しの下半身へと向けてしまった。  ズボンを押し上げ苦し気に自己主張しているソレから目が離せない。 「理人さん、ごめっ……理人さんの顔見ながら抜いていい?」 「……きめぇ……っ」 「ですよね。でも……こんなの我慢できない。1分あれば多分抜けると思うから……」  はぁ、と生々しい吐息が耳元に響く。そんな声を聞かされて正常な判断なんて出来るわけがない。 「……勝手にしろ」  理人が渋々といった体で答えると、瀬名は嬉しそうな表情を浮かべて、そのままズボンのジッパーを下げると既に熱く滾った雄を取り出しゆっくりと手を動かし始めた。 「……っ、は……」  理人の目に、眉根を寄せ切なげに顔を歪める瀬名の姿が映る。他人の自慰を見せ付けられると言うシュールな光景の筈なのに、耳元で響く水音や艶っぽい吐息に身体が疼いて仕方ない。  理人は、無意識のうちに股間に手を伸ばしていた。下着の中に手を突っ込み、緩く勃ち上がった自身を扱いてやれば、あっという間に硬度を増していく。  画面の中で瀬名が一際大きな吐息を漏らした。 「理人さん……ねぇ、乳首弄ってみて」 「は? ふ、ふざけるなっ誰が……そんな事っ」 「理人さんだって気持ちよくなりたいでしょう? ほら、指先でクリクリって転がして……強く摘まんで」 「……っ」  瀬名に促されるまま理人は右手を胸に這わせ、言われた通りに爪の先を軽く立てつつ捏ね回した。  痛いぐらいに尖っている乳首を擦ると、じんわりとした痺れが背筋を駆け上がる。  頭の片隅ではそんな事はいけないとわかっていても、一度火のついた欲望はなかなか収まらない。 「ん……ぅ……は……っ」 「あー、やば……理人さんの乳首、美味しそう……舐めたいなぁ」  画面の中と、耳元で囁かれる言葉に理人はふるりと身を震わせた。いつも、こんな風に自分のことを見ていたのだろうか? 瀬名はどんな顔をして自分に触っていたのだろう。想像するだけで腰がずくんと疼いて仕方がない。無意識のうちに腰をくねらせながら気が付けば夢中で自身を扱き、瀬名の言葉をなぞるように自らの乳首を虐めている自分がいた。  先端をぎゅっと押し潰すと、ピリリと電流のようなものが走る。それが堪らなくて何度も繰り返してやると、徐々に快感が増して行く。 「……ふ、んん……っ」  理人は甘い吐息を漏らしながら、もう片方の手でズボンを下ろして膝を立て大きく足を開いた。  瀬名に見せ付けるように性器を晒し、自慰を続ける。先端からは透明な蜜が滴り落ちてベッドシーツを濡らしていた。 「理人さん……凄い格好になってますよ。ほんとエッチだなぁ……自分でそんなにして……お尻の穴まで丸見え」 「うるさ……ぃっ」 「今すぐ、理人さんの中に挿れたいなぁ……ヒクヒクして、物欲しそうに腰揺らして……」 「んっ」  画面越しとはいえ瀬名に見られているという羞恥心すらも興奮材料となって理人を昂ぶらせる。お互いの姿が映し出された状態で、まるでセックスをしているかのような錯覚に陥り、羞恥と快楽で頭がくらくらしてくる。  しかし、いくら触れても決定的な刺激にはならずもどかしい。  ――もっと、強い刺激が欲しい……。瀬名の熱く滾ったソレで思いっきり突き上げて欲しい。  そんな淫らなことばかり考えてしまい、どんどんと呼吸が荒くなる。  ――駄目だ、もう……我慢出来ない……。

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