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ライラ ⑩
「ねぇ、あるんでしょう? ベッドの下の引き出しの中に。使って見せてください」
理人の思考を読んだかのタイミングで囁かれ、一瞬迷った。通常の思考であればそんなことに従う必要はないと思えたのかもしれないが、今の理人にその選択肢はなかった。
飢えた獣のような目が画面に映る。理人は躊躇いがちにおずおずと引き出しを漁り、中からローションのボトルとアナルバイブを取り出した。
「理人さん、それじゃあ見えないですよ。ちゃんとこっちに向けてください」
「……っ、るせっ……クソッ」
悪態を吐きながらも理人は髪を掻き上げ、バイブにローションを垂らすとよく見えるようにわざとベッドヘッドに凭れ、画面に向かって足をM字に大きく開いた。
画面越しにゴクリと喉が鳴る音が聞こえ、それだけで身体の奥が疼く。
「っ、ふ……ぅ」
理人はそろりと後ろに手を回し、窄まりに指を這わせる。すっかり柔らかくなっているそこには、少し抵抗を感じるもののズブズブと黒光りしたバイブが飲み込まれていく。
「ん……は……ぅ、んんっ」
「あー、やらしいなぁ……美味しそうに食べてる」
「は、ん……んっ……い、言うな馬鹿っ、あ、んん……っ」
根元まで挿入すると、奥をグリグリと刺激するように動かし始める。最初は違和感しかなかったはずなのに、いつの間にか慣れてしまったのか今はもう何とも感じない。むしろ、見られているせいでいつもよりも敏感になっている気がする。自らリモコンのスイッチを入れれば、微弱な振動が内壁を刺激して堪らない。
枕の下からローターを引きずり出して胸の飾りに押し当て、反対の手は自身を握り込んだ。瀬名に触られるような強さで扱きながら夢中でバイブのうねりに合わせて腰をくねらせる。
「ん、あぁ……っあっ、ふ、んん……っ」
「っ、マジ……やばい。理人さんエロすぎ。僕以外の前でそんな姿見せたら許さないからね?」
瀬名の切羽詰まった声にドキリとする。他の誰かの前でこんな姿を晒すなんて有り得ない。
けれど、自分の姿を見て瀬名が興奮していると思うと不思議と気分が高揚していくのがわかった。
「ふ、……んっ……俺が……こんな風に、なるの……お前だけ、だ……っ」
「……理人さん」
「瀬名ぁ、もっと……んっ……もっ……と」
快楽で蕩けた表情を浮かべ生理的に滲んだ涙を浮かべながら、舌足らずな声で誘うように強請ると瀬名は何かに耐えるようにぐっと歯を食い縛った。
――ああ、この顔だ……。
瀬名の色香に溢れた雄の顔を見て、ゾクゾクとした快感を覚える。普段の穏やかな彼とはまったく違う、獲物を狩るような鋭い視線に射抜かれ、どうしようもなくドキドキしてしまう。
「理人さん、イキたいなら自分で言って?……出来るよね」
瀬名の言葉に導かれるようにバイブの振動を強くし、乳首に当てていたローターの強さも上げる。
理性が飛びそうな程の強烈な刺激に、ガクガクと足が震え、身体が弓なりにしなった。
「んっ……ぁあっ、イクッ……イきそ……、瀬名ぁ……いく……ぅ、あっ! 出るっ……!」
「うん、いいよ。イッて……は、ぁ……僕も、出そう……っ」
耳元で甘く囁かれ、ビクンと身体が大きく跳ねる。瞬間、瀬名の熱い視線を感じながら、勢いよく吐き出された白濁が腹の上を汚した
「……はぁ……はぁ……」
達して身体の力が抜け、ベッドの上にくたりと横たわる。熱が過ぎてしまえばバイブの刺激は苦痛でしかなく、慌ててスイッチを切ると中からずるりと引き抜いた。
全身を襲う気怠さに、そのまま理人はベッドに倒れ込む。肩で息をしながら呼吸を整えていると、画面越しに瀬名が顔を覗き込んできた。
「ふふ、いっぱい出しましたね。そんなにそのバイブが良かったんですか? なんだか、妬けちゃうなぁ……」
「……っ」
揶揄するような口調に頬に熱が集まるのがわかる。瀬名の言う通りバイブで後ろだけで絶頂を迎えたのは初めてだった。だが――。
「お前の方がイイにきまってんだろ……馬鹿っ」
ぼそりと呟いた言葉に、画面の向こう側で瀬名が固まったのが分かった。
――しまった。つい本音が出てしまった。そう思った時には既に遅く、瀬名は顔を真っ赤にして口をパクパクさせている。
「えっと……理人さん、それは……つまり」
「……」
恥ずかしさで死にそうだ。
理人は黙ってシーツを被ってしまうと、瀬名が慌てた様子で声を掛けてくる。
「理人さん? 理人さんってば」
「……五月蠅いっ! ……っ早く、戻って来い……っ瀬名……」
理人が蚊の鳴くような小さな声で言えば、画面の向こう側にいる男は嬉しそうに破顔した。
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