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キール ⑪
「……おい。東雲……なんでコイツが此処に居るんだ?」
翌日、12月31日の午後、新宿駅近くのカフェで待ち合わせていた理人は、東雲と共に現れた人物を見て頬を引きつらせた。
「なっ、な――っ!? 薫がどうしても相談に乗ってやって欲しい奴が居るって言うから非番
でついて来たのに、よりによって鬼塚理人……だと!?」
「あれ? 知り合い……みたい、だね?」
「知り合いも何もコイツは……あの時の変人!」
「変人とは失礼な! おれは間宮大吾だっ!!!」
(チッ、相変わらずウルセェ……)
理人は心の中で舌打ちをして、思わず眉をひそめた。
「……あぁ、そうか。確かそんな名前だったな。で? なんでコイツが此処に居る?」
「なんでって、だから強力な助っ人になってもらおうと思ったんですよ」
「ぁあ? 冗談だろ?」
東雲の言葉に理人の眉間の皺がいっそう深くなった。一体何の冗談だろうか?
そう思っていると、間宮がドヤ顔でこちらに手帳を差し出してくる。
そこには「警視庁 刑事部 捜査第4課 警視 間宮大吾」と明記してある。
「おいおい……嘘だろ? 男漁りに勤しんでる変態が警察官だと?」
「失礼だな! 勤務中はそんなことしない!」
「当たり前だアホっ! はぁ……日本の警察のトップにこんなのがいるなんて……世も末だな」
「ハハッ、まぁまぁ理人さん……。この人、これでもキャリアはあるし……役に立つと思うんですよねぇ」
「……チッ……」
確かに、キャリア組なら理人にはわからない情報を知っているかもしれない。それに、警察の後ろ盾があると言うだけで随分と心強い気がする。
――が!
「ふふん、わかったか。鬼塚理人! 大体の話は薫から聞いている。お前が頭を下げるんだったらこの件引き受けてやってもいいぞ」
こんな不遜な態度を取るようなヤツに頭なんて下げたくはない。かと言って、今までわかっている情報だけ見ても、自力で何とかできるような相手ではなさそうだし。
「…………」
「鬼塚さん……」
「チッ……よろしく頼む。俺はどうしても、アイツに怪我をさせた朝倉が許せないんだ……」
背に腹は代えられず苦虫を噛みつぶしたような顔をして、眉間に深い皺を刻みながら理人は渋々頭を下げた。
「フハッ、いい眺めだな」
「あ?」
「おっと失礼。いいよ、同級生のよしみとして手伝ってやる。おれに任せておけ」
「……不安しかねぇ……」
こうして、非常に不本意ではあるが間宮に協力を仰ぐ事になり、理人は盛大な溜息を吐いた。
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