113 / 127

ムーランルージュ ⑯

なのに、なんて軽薄な事をしてしまったんだろう。例え媚薬を盛られたからと言って、一瞬でも快楽に流されそうになってしまった自分が情けない。後悔の念がどっと押し寄せて来て瀬名の腕に抱きしめられながら罪悪感が込み上げて来る。 「あぁ、そうかよ。じゃぁいいわ。なんか萎えたし……後は勝手によろしくやってろよ」 「……待って。誰が行っていいって言った?」 「えっ、は!?」  低い声がその場を離れようとする一臣を呼び止める。それと同時に理人を縛っていたネクタイが外され、パンッと小気味いい音を立てながらネクタイを手に瀬名が一臣にゆっくりと近づいていく。 「オイタした悪いお坊ちゃんには……お仕置きしなきゃ……でしょ?」 「はっ!? ざけんなお前! 何言ってんだ!」  氷のように冷たい笑みを張り付かせたまま瀬名はあっさりと一臣を捕まえると持っていたネクタイで後ろ手に縛りつけた。  そして強引に二人が見える位置に座らせると、理人の元へとゆっくり戻ってくる。  この時点でもう、嫌な予感しかしない。 「……お、おい瀬名……お前……」 「理人さんって、人に見られながらスるの好きなんですよ……だから、アンタはそこで指咥えて見とけドアホが」 「!?」  氷のような笑顔を張り付かせたまま若干ドスの利いた声で言うが早いか、着替えようとしていた理人は後ろから抱きしめられるような形で瀬名の股の間に無理やり座らされた。  一臣によく見えるように股を思いっきり開かされ器用に足でがっしりと固定され、片方の手が既に露になっている下肢に触れた。 「な、ぁっやめ……馬鹿、っ……、ぅ」  先ほどの一臣の刺激と媚薬の効果が相まって敏感になっていた胸元を摘まみながら、直に性器を掴まれ息が詰まる。  首筋や耳に舌を這わせながら二点を同時に責められてゾクゾクするような甘い痺れが全身を駆けた。こんなのは嫌なはずなのに、瀬名に触れられていると思うだけでどうしようもなく身体がビクビクと反応してしまう。 「あ、や……くそ、……止めっ」  ただでさえ恥ずかしいのに、至近距離で大股開きで性器を弄られている姿を見られるなんて拷問以外の何物でもない。  あぁ、コレは自分への罰も含んでいるんだと、理人は唐突に理解した。  一臣は何とか自由を奪っているネクタイを外そうとしながら罵詈雑言を言っているけれど瀬名はお構いなしにわざと煽るような触れ方をしてくるから余計にタチが悪い。 「ん、ぁっふ……んんっ」 「腰、揺れてますよ理人さん? 見られていつもより感じてんの? ほんっと、変態だね」 「……っ」  違うと否定したかったけれど口を開くとあられもない声を出してしまいそうで、生理的に潤んでしまった目で睨み付けながらフルフルと首を振る。  瀬名の冷たい声が無性に悲しかった。 「違わないでしょ。ココも、モノ欲しそうにして。僕の指、簡単に入っちゃいそうだけど?」 「ぅ、あ……っやめ」  するりと腕が伸びて来て指がナカに入り込んで来る。  いくら態度で嫌だと言ってみても身体は正直だ。首筋に舌を這わせながら、片方の手で乳首を弄られぐちゅぐちゅとナカを掻き乱されてどうしようもなく身悶えてしまう。  どうしよう、ここはいつも仕事で使用しているオフィスで、目の前には一臣がいるのに……。  気配で一臣がゴクリと息を呑むのがわかった。一臣はいつの間にか口を閉ざし、瀬名の腕の中で淫らに腰を揺らす理人の姿を食い入るように見つめている。

ともだちにシェアしよう!