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ムーランルージュ ⑱
「はぁ、はぁ……」
「沢山出しましたね。理人さん……見られながらイった気分はどう?」
瀬名の手にベッタリとついた白濁をうっとりとした目で眺めながら、まだ余韻の残る理人に冷たい声が問いかけてくる。
薬のせいでいつもより敏感になり、挙句、見られながらイカされた。
「……っ、最悪だよ馬鹿っ」
「最高に悦かったの間違いでしょ?」
ククッと喉で笑いながら囁かれ、どうしようもなく頬が熱くなった。違うと言いたかったが、いつも以上に感じてしまっていた事実は隠せるはずもない。
目の前には一臣が居て、今にも飛びかかって来そうな形相で瀬名を睨み付けている。
「クソ! おい、外せよコレ! もう充分だろ? なぁ」
「ダーメ。ていうか、僕まだ満足してないから」
「へ? あっ、ちょっ、おいっ! 嘘だろ!?」
言うが早いか繋がったまま四つん這いの姿勢にさせられた。鼻先に一臣の股間が迫り慌てて両手を突っ張って身体を支える。
「あっ、あっっ、ふざけんな瀬、名、動くな……ば、かぁあっ」
ブンブンと首を振って止めて欲しいと訴えるが聞き入れてもらえる気配はなく、再び瀬名が激しく律動を開始する。
射精したばかりの体は敏感で、どうしても堪え切れない嬌声が吐息と共に零れてしまう。
「や、ぁっああっ、くそ、馬鹿、……ぁあっ」
「クソッ、こんなのマジ堪んねぇって! なぁ、瀬名もういいだろ? カンベンしてくれよ」
今にも泣きそうな切羽詰まった声を上げながら、一臣が猛抗議してくる。
しかし瀬名は無言のまま、容赦なく理人を責め立てていく。
先ほどよりも激しい抽挿にガクガクと膝が震える。
「なぁ、俺が悪かった。謝るから……マジ……こんなの冗談キツイっての」
「んー、そうだな。どうします、理人さん?」
「んっ、ふぁ、どうって……聞くな、ぁあっ」
聞かれたって答えられるはずも無い。
それがわかってて質問するのだからやっぱり瀬名はいい性格をしていると思う。しかも、未だに怒っているのがひしひしと伝わって来る。
身体はマグマのように熱いのに、背後から聞こえてくる声色と視線はビックリするほどに冷たい。
「あぁ、そうだ……咥えてあげたら? 好きでしょう理人さんしゃぶるの」
「……ふざけんな! 誰が……っ」
「いいから、やりなよ」
硬い声と冷ややかな視線が突き刺さり、突き上げながら早くやれよと急かされて、躊躇いがちに一臣のズボンに手を掛けた。
「お、おい……っ」
既に限界まで張りつめたソレは、はちきれんばかりに膨張しきっていて先端から蜜を滲ませている。
凄い、固そう……。
ゴクリと唾を飲み込みながらゆっくりと唇を近づけると、一臣の腰がビクリと揺れた。
舌を這わせて、口に含む。
途端に口内に広がる独特の味に眉をしかめながらも、歯を立てないように気をつけながら舐めて吸っていく。
「……ッ」
恐る恐る、亀頭を口に含む。そのまま舌でぐるりとなぞると、口の中で一回り大きくなった。
舌を長く伸ばして、側面と裏筋を丹念に舐めあげる。陰嚢を転がすように愛撫しながら尖らせた舌を鈴口の中にねじ込むように舐め、届かない根本はは手で扱いてやると、一臣の口から溜息のような吐息が洩れた。
「は……く、すげ……なんだこれ、やべっ絡みついて来て腰抜けそ……」
「ハハッ、理人さん咥えながら突き上げられて興奮してるの? 凄く締まってるほんっと、淫乱……」
パンパンとリズムよく打ち付けながら、冷ややかな声が響いてくる。もしかして呆れられてしまったのだろうか?
この行為が終わったら、今度こそ本当に瀬名との関係も終わってしまうかもしれない。そう考えたら胸が苦しくて涙が溢れそうになった。
出来れば、こんな形じゃなくてちゃんと話し合って終わりにしたかった。もっとお互いの事を知って、理解してから別れたかった。
けれど、そんな願いもきっと叶わないのだろう。
最後に、自分のものだと言って貰えただけでも良かったのだと思わなければ――そう思うのに、それでも瀬名を失うのが怖くて仕方がない。
「理人さん、集中してくださいよほら……」
物思いに耽っていたのが気に入らなかったのか、突然伸びて来た指先に乳首を摘ままれ息が詰まった。
「ん、ん……ふ……ぁっ、ぅっ」
ふにふにと遊ぶように弄られるとどうしても意識がそっちに行ってしまい、途端に喘ぐほうが多くなってしまう。こんな状況でも簡単に快感を拾って反応してしまう自分の身体を呪ってしまいたい。
「くそ、その顔マジ……反則だろ……」
「っ、ん、んむぁっは……」
熱に浮かされたような掠れた声を上げ、一臣が瀬名の動きに合わせるようにして腰を揺り動かし喉奥を突いてくる。
「は、んっ……んんっ」
一度に色々と刺激されたら本当にわけがわからなくなってしまう。
息苦しくて、首を振って逃れようとしても許して貰えず、強すぎる快感にだんだんと頭がくらくらしてきた。
「ん、せな……俺も……ぁっ、ああっ無理……っ」
「あ、ちょっ」
白く霞んでいく意識の中、瀬名たちが何か叫んでいたような気もしたが、理人の意識はその辺でぷつりと途絶えてしまった。
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