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キャロル ⑦

「ん……っ、あ……っ」  いつものようにお互いを求め合い、絶頂を迎えた二人は心地良い疲労感に身を委ねていた。  ヘッドレストを背もたれ代わりに座った瀬名に後ろから抱きかかえられるような格好で、彼の肩口に頭を預けていると、ちゅっと旋毛に優しく唇が触れた。 「理人さん、好きです」 「……知ってる」 「あれ? 理人さんは言ってくれないんですか?」 「……っ、好きじゃなかったら……わざわざお前の為に料理なんかしねぇ!」 「ふふ、そうですね」  理人の言い分がおかしかったのか瀬名が可笑しそうに笑い声を漏らした。気恥ずかしさを覚え、むすっとした表情で脇腹を軽く肘で突いてやると大袈裟なほど顔を歪めて見せる。 「もー痛いなぁ……」  勿論、理人だって本気で肘鉄を食らわせたわけでは無いし、瀬名もそれはわかっているのだろう。クスクスと笑いながら首筋に息を吹きかけて来る。 「っ、おいっ!」 「あれ? 感じちゃいました?」 「ち、ちが……少し、くすぐったかっただけだ……」 「ふぅん、本当に?」  瀬名は意地悪そうな表情を浮かべると理人の身体を後ろから抱き締めたまま、首筋に吸い付き赤い痕を残しつつ、滑らかな肌を堪能するように指先で背骨を辿っていく。 「……っ、んん、おい……跡は付けるなっていつも言ってんだろうが」 「大丈夫。見えるところには付けませんって」 「そう言う問題じゃ……っ」  瀬名は背後から覆い被さるようにして胸の突起を摘まんだ。くりくりと刺激してやると未だ火照ったままの身体は敏感に反応し、理人の口から甘い吐息が零れる。 「ぁ……ん……瀬名……ダメだって……」 「ん? どうして?」 「どうしてって……お前……っ」 「ふふ、乳首弄られて感じてるんでしょう? 理人さんのココ、固く尖ってきてる」 「っ、や……ぁ……」  カリッカリッと爪を立てて掻かれ、堪らずビクビクと身体が跳ねた。治まりかけていた熱がじわじわとせりあがってくるのを感じ、理人は慌てて膝を摺り合わせる。 「やだやだばっかり……。理人さん本当は嫌じゃないでしょう? こうされるの大好きなクセに……」 「違ッ……」  否定の言葉を口にするが説得力など皆無だ。ツンと主張する二つの粒を押し潰すようにしてぐりぐりと捏ね回されてしまえば、否応なしに快感が高まっていく。 「理人さんはココ弄られるの好きだもんねぇ? 気持ちよさそうな声出して」 「ちがっ……んんっ」 「違わないでしょう? ほら、また勃ってきた」  瀬名は片方の手で右の突起を摘まみ、コリコリと転がしながらもう一方の手を下腹部に這わせた。既に熱を持ち始めているそこを掌で包み込みゆっくりと撫でてやると、そこはすぐに硬度を増して形を変え始める。理人の口から切なげな声が漏れる。 「っ、あ……やだっ……」 「嫌じゃないくせに。……あ、そうだ理人さん。チョコレート食べませんか?」 「あ? 急になんだ?」  唐突に尋ねられ、こんな時に何を言い出すのかと訝し気な視線を向ける。 「疲れたときって甘いモノ食べたくなりません?」  言いながら、瀬名はサイドボードからお菓子の箱くらいの大きさのケースを取り出した。 「……っ」  それを見た理人の表情に驚きの色が浮かぶ。 「おい、これってまさか……」 「はい、例の媚薬入りチョコです。一昨日届いてたんですよ。人気商品みたいで、出荷までだいぶ時間かかっちゃいましたけど間に合ってよかった」  皆スキモノなんですねぇなんて言いながらニコニコと嬉しそうに笑う瀬名とは対照的に、理人は複雑な面持ちでじっとその箱を見つめている。 「あのなぁ、お前……」  呆れたように溜息をつく理人を横目に瀬名は包装紙を破っていく。そして、蓋を開けると中から現れたハート形のチョコを一つ摘まんで理人に差し出した。 「ほら理人さん、あーんして?」 「っ、誰が食うか! アホッ!」 「えぇ、なんでですかぁ? 美味しいのに……」 「んな怪しいモン普通に食えるか! バカかお前は!?」 「でも理人さんだって興味あるでしょ? 今よりもっと気持ち良くなれるかもしれないんだよ?」 「……」  瀬名の一言に理人の心が揺れ動く。確かに、この前のアレは凄かった。正直もう一度体験したいと思ってしまう自分がいる。 「理人さん……ね、試してみたくないですか?」  瀬名が耳元に唇を寄せて甘ったるい声で名前を呼ぶ。蠱惑的な囁きはそれだけで腰が疼いて仕方ない。 「それに、もしかしたら誇大広告かもしれないし。何も効果なかったらただのチョコでしょう?」  確かにそうかもしれない。興味が全くないと言えば嘘になるし、もしこれが本物ならもっと気持ち良くなれる可能性がある。 「……」  理人が葛藤していると、瀬名はニヤリと笑って耳たぶをペロッと舐めた。 「ぅ、ひゃっ!?」  突然のことに驚いて思わず変な声が出てしまう。 「ふふ、可愛い」 「~っ、うっさい! つーか耳舐めんな! くすぐったいだろうがっ」 「くすぐったいだけ? ……本当に?」  瀬名はそう言って再び耳元へ唇を寄せると吐息を吹きかけるように囁いた。その瞬間、ゾワッとした感覚に襲われて身体が小さく震える。 「っ、あ……ちょっ……」 「ふふ、やっぱり。理人さん、耳弱もいですよね。可愛い……こんな敏感なのに、食べたらどうなるんだろう? 考えるだけで興奮しちゃいますね」  瀬名はうっとりと呟くと既に硬く反り勃った雄を理人の腰に押し付けながら、チュッチュッと音を立て耳にキスをした。時折、ガチガチに硬くなったモノの存在を感じつつ、耳に舌先が触れると堪らない気分になってくる。 「っ、瀬名……もう、わかった、食う、食うから……っ耳はやめろっ!」 「本当? 嬉しいなぁ。じゃあ、はいどうぞ」  瀬名は満足げにほくそ笑むと手に持っていたチョコを理人の口の前に差し出した。鼻腔を擽る香りは至って普通のチョコレートだ。これを食べたら……自分は一体どうなるのだろう?  正直怖い、でも――。  ごくりと唾を飲み込むと、覚悟を決めて口を開いた。

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