6 / 22
第6話
「....なんか食ってく?テキトーに作るけど」
キッチンに向かう俺を明文は唖然とした顔で見た。
「料理出来ないとか言ってなかったっけ?」
「んー...出来なくは無いけど、明文のぶんまで、て考えて無かった、ていうか...ほら、うち母子家庭だったし、自然と料理覚えるほか無かった、ていうか。て、凝った料理は無理だけどね」
そう苦笑して冷蔵庫を漁り、キッチンに立った。
「普通に美味そう」
テーブルに並べた二人分のオムライスとスープ、サラダに明文が釘付けになってる。
「や、誰でも出来るんじゃない?オムライスやスープなんて」
「俺、たまにカップ麺すら失敗するけどな」
「あー、お湯の分量とか?あるある」
「それもあるし、味薄いしマズイのに当たったな、と食い終わってスープの袋、入れ忘れに気づいたりとか」
明文と向かい合って俺の部屋で夕飯とか、初めてだ。
「てかさ、灯真」
スプーンでオムライスを運び、頬張っている最中だった。
「ケチャップ?キッチンだけど」
「そうじゃなくて、セフレ解消しない?」
空気が遮断されたような感覚を覚え、そして、明文を見ると、思いがけず、真っ直ぐで真剣な明文と瞳とぶつかった。
「....彼氏が出来た、とか?だったら仕方な...」
「そうじゃなくて。付き合わないか?セフレ解消して」
沈黙が続いた。
どう答えたらいいかわからず、視線がテーブルに落ちたまま、過ぎていく時間。
「考えといて、とりあえず」
「....うん」
明文と...付き合う。
考えたことが無かったから...困惑した。
翌日、俺は一人、隼一のバイトするカフェにいた。
なんでも、シェフが試作品を作るから、食べに来て欲しい、とのこと。
「バイトばっかだと忖度しそう、て話しでさ。....友達は?」
「あ、ああ、明文は用事ある、とかで」
敢えて、明文は呼ばなかった。
まさかの告白の返事をまだしていないから...。まだ、決めかねていた。
制服姿の隼一の笑顔に、未だ、鼓動が早まる....。
未練がましいにも程がある、それならいっそ、明文と....。
ただ、隼一を忘れたいが為に付き合うかのようで....
「どう?灯真」
「え?ああ、美味いよ」
「ホントに?心ここに在らず、て食い方だったから、イマイチなら素直に言っていいから」
素直に....か。
「....好きだよ」
途端、正面に座る隼一から笑顔が消えた。
ともだちにシェアしよう!