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第6話

「....なんか食ってく?テキトーに作るけど」 キッチンに向かう俺を明文は唖然とした顔で見た。 「料理出来ないとか言ってなかったっけ?」 「んー...出来なくは無いけど、明文のぶんまで、て考えて無かった、ていうか...ほら、うち母子家庭だったし、自然と料理覚えるほか無かった、ていうか。て、凝った料理は無理だけどね」 そう苦笑して冷蔵庫を漁り、キッチンに立った。 「普通に美味そう」 テーブルに並べた二人分のオムライスとスープ、サラダに明文が釘付けになってる。 「や、誰でも出来るんじゃない?オムライスやスープなんて」 「俺、たまにカップ麺すら失敗するけどな」 「あー、お湯の分量とか?あるある」 「それもあるし、味薄いしマズイのに当たったな、と食い終わってスープの袋、入れ忘れに気づいたりとか」 明文と向かい合って俺の部屋で夕飯とか、初めてだ。 「てかさ、灯真」 スプーンでオムライスを運び、頬張っている最中だった。 「ケチャップ?キッチンだけど」 「そうじゃなくて、セフレ解消しない?」 空気が遮断されたような感覚を覚え、そして、明文を見ると、思いがけず、真っ直ぐで真剣な明文と瞳とぶつかった。 「....彼氏が出来た、とか?だったら仕方な...」 「そうじゃなくて。付き合わないか?セフレ解消して」 沈黙が続いた。 どう答えたらいいかわからず、視線がテーブルに落ちたまま、過ぎていく時間。 「考えといて、とりあえず」 「....うん」 明文と...付き合う。 考えたことが無かったから...困惑した。 翌日、俺は一人、隼一のバイトするカフェにいた。 なんでも、シェフが試作品を作るから、食べに来て欲しい、とのこと。 「バイトばっかだと忖度しそう、て話しでさ。....友達は?」 「あ、ああ、明文は用事ある、とかで」 敢えて、明文は呼ばなかった。 まさかの告白の返事をまだしていないから...。まだ、決めかねていた。 制服姿の隼一の笑顔に、未だ、鼓動が早まる....。 未練がましいにも程がある、それならいっそ、明文と....。 ただ、隼一を忘れたいが為に付き合うかのようで.... 「どう?灯真」 「え?ああ、美味いよ」 「ホントに?心ここに在らず、て食い方だったから、イマイチなら素直に言っていいから」 素直に....か。 「....好きだよ」 途端、正面に座る隼一から笑顔が消えた。

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