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第8話
二人で久しぶりにテレビ番組や映画やら、たわいない会話をしていた、そんな時だった。
「隼一」
背後から、正確に言えば、隼一の背後になるけれど、大学一年の俺達より年上だろう、と思わせる、男らしい雰囲気を持った男性が隼一に声を掛けた。
「....隼一?」
振り向こうとしない、瞬きも忘れたかのようにテーブルの一点を見つめる隼一に声を掛けた。
「隼一、頼む、話しを聞いてくれ」
くるり、隼一は振り返り、
「店にまで来るなよ、もう終わった筈だろ?」
唖然としつつ、二人を見つめた。
「灯真、悪いな、ありがと、試食」
そう俺に言い残し、席を立つと、隼一はその男性と店を出た。
窓ガラス越しに、隼一と男性が何か言い争っている風に見えた。
「....何かトラブルかな....?」
心配になり、お勘定を済ませ、そっと、扉を開いたが、二人は俺に気づいては無く、感情任せな言い争いの最中だった。
「だから、何回、言わせるんだよ。最初から本気じゃ無かった。そっちだって理解してた筈だろう?」
「結局、なんだ?利用したのかよ、俺を」
「利用?利用って何の利用だよ。利用したのはそっちだろ?俺の体を使わせてやったんだから」
思わず、目を見開いた。
咄嗟に隼一の視線が俺に移り、隼一が息を詰まらせた。
「どうせ、好きな男でも出来たんだろ?本当のことを言えよ、隼一」
「....うるさい!」
隼一は自分より背丈もあり、体格もいい男性を押しやり、背中を向け、立ち去った。
呆然とその姿を見つめる俺に、
「隼一の知り合い?」
男性が見下ろし、声を掛けて来たが、
「いいえ...ただの通りすがりです」
そうして、隼一の向かった方角に男性にバレないように大股で歩いた。
もし、俺の勘違いで無ければ...
隼一はあの男性と関係を持っていて...俺に知られて、慌てて逃げた....。
いつもとは違い、隼一を避けてばかりいた筈の俺は、俺にバレた、と思っているかもしれない隼一へ、心配と不安が募り、早く会いたいと、隼一を探した。
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