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第9話
結局、俺は隼一を見つけることが出来ず、自宅に戻った。
「ったく、何処行ってたんだよ、灯真。スマホも電源入ってやしないし」
玄関のドアに寄りかかって俺を待っていたらしい、明文に出くわし、デニムのポケットからスマホを取り出した。
「....ごめん。充電切れてた」
「早く部屋上がろうぜ、暑いのなんの」
「てか、どうしたの、明文」
部屋へと入りながら尋ねた。
「いや、返事はまだかな、と思ってさ」
ふと、スマホを充電し始めて、隼一の連絡先を明文が聞いていたことを思い出した。
「....そういえば、明文」
「あ?」
「隼一と連絡、取ってたりする...?」
僅かな沈黙の後、
「ねーよ。てか、あいつは諦めろよ、灯真」
先日まで、告れ、と言っていた筈、と怪訝に感じ、再び、
「本当に隼一と連絡を取っては無いの?一度も?」
「無い」
「....嘘だよね?明文、嘘が下手すぎ。それに、ついこないだまで、当たって砕けろ、みたく言ってたのに、諦めろ、てどういう風の吹き回し?」
「それは...あいつはノンケだろ?傷つくだけだから」
「....おかしいよね。あんなに逃げ回ってないで、どうせノンケだろうけど、友人になれる筈、て隼一へ気持ちをぶつけろ、て言ってたのに」
また、沈黙になった明文を軽く睨み上げると、降参したかのように明文が小さく息を吐いた。
「....詳しくはあいつから直接、聞け。プライバシーの問題だってある、俺からは何も言えない」
明文は俺を見ようとはしないまま、そう言い残し、部屋を後にした。
「....明文に話した....何だろう...とりあえず、早く充電、終わってくれ」
ようやく、充電器に差し込んだままで、隼一に電話したが、隼一は出なかった。
メールも既読にならない。
翌日は隼一のバイト先に出向いたが、
「家庭の事情で暫くお休みらしいです」
と、別のバイトの子が教えてくれた。
「隼一の自宅、わかる人、ている?」
「あー、どうだろ...履歴書から店長はわかるだろうけど...個人情報だし....」
諦めるしか無いのか....?
「心配なんです...俺、中学からの知り合いで...助けて貰ったのに、礼一つ、まだ伝えていなくって....」
泣きそうな思いだった。
あんなに再会したくなかった筈なのに。
再会したら、また、隼一に会いたいし、声が聞きたい。
あの笑顔が見たい。
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