9 / 11

第9話 星紋 ※

   体のありとあらゆる部分に、水刃の舌が這う。  首に、鎖骨に、小さな乳首に。摘まみあげられ、吸い上げられ、指の腹でやわやわと捏ね上げられる。そんなところに触れられてもと思ったのに、おれの雄茎からは先走りがたらたらとこぼれて止まらない。硬く張り詰めた先端に口づけし、水刃がちろちろと舌で竿を舐めていく。 「あっあっ! やっ!」  双球を優しく揉まれ、鈴口からこぼれた雫は全て水刃の熱い口中に飲み込まれた。 「だめ、みずはぁ……」  息も絶え絶えなおれを水刃は抱え上げて、隣の寝室に連れて行く。さらりとしたシーツが敷かれたベッドにそっと下ろされた。わずかな光の中で水刃の体はとても美しく輝いている。  水刃は自分の長い指を口に含んだ。指先から根元までがぬるりと光る。淫靡な仕草に目を瞠ると、妖艶に笑う。 「唾液の中にも体を痺れさせる毒はある。火未の体を、ゆっくり拓くね」  後孔に触れられ、指先がぐちゅりと中に潜り込む。じわじわと熱いような痺れるような感覚が広がっていく。たまらなくなって、水刃の指を入れたまま後孔に力が入った。きゅうきゅうと指を締めつけているのがわかる。 「ああ、指だけでもそんなに締めつけられたら、たまらないな。こっちが我慢できなくなる」  片手で抱きしめられると、内腿に熱く硬いものがごりごりと触れた。水刃の雄茎はおれのものとは比べ物にならないほど大きい。 「早く火未と一つになりたい」  甘い声で囁かれ指で肉襞の浅い所に触れられて、おれの体はびくびくと跳ねた。快感を得た一点から足先まで、突き抜けるような痺れが走っていく。 「あっあっ! みずはッ!」 「ん、ここ、気持ちいいね」  何度もこりこりと触られて、出したくて出したくてたまらない。 「い、イクっ」 「ひみ、火未。待って」  後孔から中をかきまわしていた水刃の指が引き抜かれた。急に寂しくなって体が震える。両足の膝裏をすくわれ、水刃の滾りきった楔が当てられる。水刃のそれを見て、おれは目を瞠った。  赤黒く太いものの上に、くっきりと星紋が浮かび上がる。  目を離せずにいるおれに水刃が笑う。 「星座にはそれぞれに支配する部位がある。火未は牡羊だから首から上」  ああ、そうだ。だからおれの星紋は頬に浮き上がる。 「ぼくは(さそり)だからね。下位の前立腺にあるんだ」  さそり? 「うそ、水刃は蟹座じゃ、ないの?」 「誰がそんなことを言ったのかな? 同じ水でも、あっちはだいぶ優しいと思うけど」  首を傾げながら、紅い瞳を煌めかせて水刃は思いきりおれを貫いた。 「あ! あああっ! あっ」  水刃の楔が、みちみちとおれの中を穿って奥に入り込んでいく。蠍の毒は甘く熱い。内壁を擦られ、身の内が狂わされていく。 「ああ、すごい。気持ちいいよ、火未。火傷しそうなくらい熱い」  自分の中がうねって、水刃に吸いついていくのがわかる。 「やっ! 水刃あ!」  水刃が熱い息を漏らして、さらに中に入ってくる。肉襞をかきわけ、奥へ奥へと進む。 「あ! あああああ!」  信じられないような快感だった。体中が慄き、気が狂いそうなほど気持ちがいい。  何度も抜いては突かれ、俺は堪らず白濁を吹き上げた。 「ああ、火未。ぼくも、もう堪えられそうにない」  眉を寄せた水刃が、最奥まで突きあげながらキスをする。中ではちきれんばかりに膨らんだ熱いものが迸った。あるはずもない奥の部屋に満ちる欲。胎内にたっぷりと子種が注がれ、あやすように囁く水刃の声が遠い。 「……孕んでしまえばいいのにね、火未」  水刃はうっとりと微笑んだ。自分のものが収まったおれの体を、愛おし気に撫でながら。  

ともだちにシェアしよう!