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葬式の中で 3

「それで、ついでに訊ねますが、清志郎様の焼香を上げに来たのですが、どちらの部屋なのでしょうか」 焼香を上げに? 眞ノ助といくらか変わらなさそうな年齢の見た目の若者が、生前、祖父と何の関係があったのだろう。 「……祖父とどんな関係で?」 訝しげに聞き返すと、数秒の沈黙の後、「……ちょっとした知り合いです」と答えた。 が、しかし、眞ノ助は見逃さなかった。 その男性がどこか痛めたような苦しげな表情をしたことに。 けれども、さほど興味がなかった眞ノ助は、「あ、そう」と素っ気ない返事をした。 「それと、これからこの佐ノ内家に勤めることとなりましたので、ご挨拶にと」 「勤める? お前、使用人なのか」 「はい、そうですが」 今日は焼香を上げにと喪服なのだろうが、それにしても、なよなよとして頼りなさげだ。これで、男性使用人として勤まるのだろうか。 「旦那様には事前に来ることを伝えていましたので、ご存知かと思いますが、奥様と──一番は、側仕えとなる、眞ノ助坊っちゃまにもご挨拶にと」 「……は?」 まさか自身の名前が出てくるとは思わず、自分の耳を疑った。 たしかに数日前に、なかなかのお気に入りであった側仕えが、おやつを持ってきた際に、何かにつまずいたのだろう、飲み物もろともひっくり返り、その飲み物が見事に眞ノ助に被ったことにより、怒りのまま解雇したばかりであった。 だからか。だが、そんな話は一言も聞いていないのだが。 「眞ノ助は僕のことだが、そんな話一切聞いていない」 「そう、でしたか……。これは、私の手違いかもしれません。大変申し訳ありません」 また深く頭を下げる所作に、見惚れてしまいそうになったが、頭を振った。 「ま、どうでもいいが、これから僕の世話になるんだろう。一応、名前は聞いておいてやる」 「はい、では……」 背筋を伸ばし、いくらか目を細め、眞ノ助の姿を捉える。 気品溢れる上品な笑みを含ませて。 その表情が、蠱惑的という言葉が似合うぐらい、身体の奥が疼くような感覚を覚えた。 今まで感じたことのない感覚に戸惑っている眞ノ助とは裏腹に、その男性は形の良い唇を動かす。 「私の名は……寂しい柳に、蓮と書いて、寂柳蓮。改めまして、よろしくお願い致しますね、眞ノ助様」

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