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つまらない 4
「はぁー…………」
怒りが収まらないといったため息を深く吐きながら、後ろへと倒れ込んだ。
その時、頭上にかつての玩具であったガラクタが眼前と迫る。
鬱陶しい。
それらから逃れるように目を閉じた。
苛立って興奮が冷めやらないというのに、日頃からの寝不足があるからか、すぐにこことは違うところへと誘われた。
『眞ノ助』
縁側で投げ出した足をぶらぶらさせていると、背後から声を掛けられた。
大概自分に用があって、名前を呼ぶのは一人しかいない。
『おじーちゃん』
振り向いて、嬉々としてそう呼ぶと、祖父はにこりと笑った。
そして、眞ノ助の隣に座った。
『眞ノ助はここで何をしている?』
『別にぃ、何もしてないよ』
『こないだ買った玩具はどうした?』
『もう遊ばない。いらない』
『そう、か……』
意味ありげにため息を吐くように言い、庭の方へと目線を向けた。
庭師によって手入れされた木が植わっており、その合間に祖父と手を繋いでもとうに届かない広さの池があった。
そこそこ深いから眞ノ助は近づいてはいけないと、側仕えに咎められたが、眞ノ助は他の使用人が鯉に餌をやっている姿を見かけ、自分もあげたくなり、わざと部屋を散らかして、側仕えが自分のそばからいない隙を狙い、前に見つけた、餌を置いてある場所へと行き、誰もいないうちに餌を持って、やったことがあった。
しかし、もっと遠くへと餌をやろうと池を囲っている岩に乗り、足を滑らせ、落ちてしまったことで、そのもがく水音に気づいた側仕えが血相を変えて、救い出された。が、その際にこれでもかと説教されたこともあり、池に近づくことも、そして、眞ノ助がその側仕えを毛嫌い、暇を与えた出来事が、つい最近あった。
その後に新しく来た側仕えは、うちの父と話があるようで、今はそばにはいない。
あの池に落ちた時に、父が端々と怒っている雰囲気を感じ取ったので、側仕えがいなかろうとも、慄いて、大人しくしていると思っているのかもしれないが、ただでさえいつも退屈している眞ノ助が、思いもよらぬ行動をするとは思わないのだろうか。
そして、今まさにそうしようと思っていた最中に、祖父が来たのだ。
『お前は、欲しい物を与えても、すぐに飽きてしまうな』
池の出来事をぼんやりと思い返していると、祖父が少々呆れた口調で言ってきた。
そんなことを言われても、面白くないと思ったら、面白くないのだ。
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