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つまらない 5
その心の内を声に出すと、『そうか、そうか』と一見同情しているかのような言い方をした。
『眞ノ助は自分で自分をつまらなくさせているな。そんな考えでいると、いつまで経っても面白くないままだ』
『だって……面白いと思ったことがないんだもん』
『ふむ……』
すると、祖父は組んでいた腕を組み直した後、こう言った。
『まだ眞ノ助は、狭い視野でしか物事を見てないんだ。もう少し、そうだな、あの空を見るように、遠くを見てごらんなさい。そしたらきっと、私のようにひとつのものを好きでいられるかもしれん』
『ひとつ、のもの……』
祖父が言う「ひとつのもの」と言うと、前に会った艶やかな人のこと。
『こん……前に会った女の人に、今度はいつ会える?』
『……っ、まだ、体調が優れないようでね。治るまでしばらく掛かりそうだ』
『ふぅん……』
頭を撫でられた。
普段は素直に喜ぶところだったが、今は『金平糖の君』に会いたいという頭しかなく、まだ会えないんだと気持ちが沈んでいった。
いつになったら、会えるんだろう。
「こん、ぺ……い、と……」
薄らと目を開けた。
今思えば、あれは祖父の嘘だったのだ。本当はいつでも会いに行けたはず。だけど、『金平糖の君』は、祖父だけの『大事なひと』で、容易に会わせたくなかったのだろう。
だったら、元から孫の自分に会わせなければ良かったのに。
そうすれば今頃、こっちだってここまで想わない。
「──起きられましたか」
なかなか開かない目を瞬かせてから少しした後、覚めた目線の先に、美しい顔が微笑んでいた。
『金平糖の君』……いや、あの側仕えだ。
その側仕えが眞ノ助のことを見下ろしていた。
「入浴の時間になりましたので、呼びに来たのですが、何度も声を掛けても返事がなかったもので、勝手ながら部屋に入ったのですが……」
そう説明する側仕えに、いつの間にか眠っていたことを気づかされ、次に頭のそこそこ固い感触が何なのかと分かった瞬間、バッと飛び起きた。
「な、なんて、真似を……っ」
「申し訳ありません。しかし、僭越ながら坊っちゃま。このような部屋に寝そべるのはどうかと思いまして。失礼ながら、私の膝に頭を乗せておきました」
「……~~っ!」
側仕えの分際で、と言おうとしたが、図星され、言い返す言葉がなくなってしまった眞ノ助は、怒りで爆発しそうになっていた。
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