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つまらない 7
寝巻きを纏い、タオルを手に、その足で自室に戻ろうとしていた。が、足が止まった。
自室の灯りが、いつも以上に明るく、外廊下側の障子に漏れていた。
いや、何故、まだ灯りが灯っている?
その疑問が浮上したのも一瞬で、ある人物が頭に浮かんだことにより、足音を立て、その勢いのまま障子を開けた。
「あ、坊っちゃま。お帰りなさいませ」
部屋中央で正座をしていたあの側仕えがこちらの姿を捉えると、ふと微笑んだ。
頬が熱くなるのを感じた。
──いや。これは風呂上がりで身体が熱くなっているからだ。他の意味など、決してない。
「坊っちゃま。髪を濡らしたままですと、風邪を引かれてしまいます。私でよろしければ──」
「──……で」
「え?」
「……なんで、まだいる? しかもなんなんだ、この部屋は!??」
障子を開けっ放ししていることを、怒鳴った後に気づいたが、この際どうでもいい。それよりも部屋の状態に驚愕も混じる。
ほぼ部屋を埋め尽くさんばかりのガラクタが、部屋半分ほどに、しかも、きちんと並べられており、その半分は文机の前に綺麗に畳まれた布団が置かれていた。
いつぶりに見るであろう畳は、ところどころ痛みが見られるが、それでも一種の感動さえ覚える。
大した時間を入ってない入浴時間に、ここまで片付けられてしまうとは。
「何を勝手に片付けている。僕はそんな命令を出してないが」
「申し訳ありません。ですが、坊っちゃまの身の回りを綺麗に務めるのも、私の仕事でございます。……それも、ありますが、個人的な感情としましては、このような環境では心身共に健やかに過ごせないと思いまして。誠に勝手ながら、坊っちゃまの入浴時間内に出来る範囲のところをしておきました」
微笑んだ顔ではない、真剣とも思える表情。
そんな顔をしながら、そうなった経緯をはっきりと丁寧に述べていく。
今までの側仕えならば、ただ単に主人の命令だけを聞き入れるだけで、一切それ以上のことはしなかった。
「……あっそ。……ほんとに、勝手がすぎる」
「……ええ。申し訳ございません」
「何、笑っているんだ」
「いえ、笑っておりません」
「いーや、この僕が言っているのだから、お前は笑っているんだ」
「そうですね。我が主人である眞ノ助坊っちゃまがそう仰るのであれば、そうとも思えますね」
「……気に食わない」
そっぽ向いてそう吐き捨てると、八つ当たりするように障子を思いきり閉めると、どすどすと布団へと向かい、広げる。
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